何と世界一高い日本の生涯無子率

未婚率については、生涯未婚率(50歳時未婚率)が算出されており、当連載でも2022年11月11日記事で、そのデータの推移から、一生結婚しない男女が急増している動きを取り上げた。

無子化は、生涯未婚化と、子どもをもうけない夫婦の増加の上昇の両方によって促進される。婚外子が多い諸外国とは異なり、婚外子の少ない日本では生涯未婚率の上昇は、無子化に直結するので、上記記事で見た未婚率の上昇は無子化の大きな要因と考えることができよう。これに前項で見た夫婦の無子化志向が合わさって無子化が現実のものとなっているわけである。

無子化の要約的な指標は、未婚率と同様、生涯無子化率ということになろう。

そこで最後に、OECD報告書から生涯無子率の世界ランキングを図表5に掲げた。

1970年に生まれ、2020年に50歳を迎えた女性の無子率、すなわち生涯無子化率をOECD各国について見てみると、最低はメキシコの6.3%、最高は日本の27.0%となっている。

日本は2位のフィンランドの20.7%を大きく上回っており、子どもを産まなかった無子女性比率が先進国トップ、そしてこの指標は事の性格から途上国よりOECD諸国の方が高いことを考えると、ほぼ確実に世界一の国である。

データのない韓国については、現在の出生率は図表1で見たように、OECD諸国の中でも韓国のほうが日本より低い。すなわち現在では子どもを産む女性が韓国のほうが少ない。とはいえ、2000年以降にそうなったのであるから累積効果の大きな生涯無子率では韓国のほうが低く、日本の世界一は揺るがないと思われる。

【図表】世界一高い日本の無子化率
筆者作成

データのある主要先進国(G7諸国)の順位を高いほうから掲げると以下である。

1.日本 27.0%
2.英国 20.5%
3.カナダ 19.9%
4.米国 11.9%

ドイツやフランスのデータがないのが残念であるが、この範囲でも各国間の差が大きい点が目立っている。米国の場合、特に値が低いが黒人やヒスパニック系の出生率が以前はかなり高かった影響もあろう(今では非ヒスパニック白人とそう大きな差はない)。

同調査の2005年(一部2000年)段階の生涯無子化率からの変化を見ると、比較可能な21カ国中、低下したのは6カ国と少数派であり、大方は上昇していることが分かる。世界的に無子化が進み、子どもを産まない女性が増えているのである。

特に日本は2005年11.9%から2020年27.0%へと2倍以上に増加している点が目立っている。増加幅も世界一となっている。

冒頭にふれた「うまずして何が女性か」発言の問題点についてであるが、女性への配慮の欠如というより、むしろ、こうした世界的な無子化傾向、特に日本でシリアスな無子化傾向という文明論的なトレンドに対して、単に、保守的な女性の役割意識を持ち出すだけで足りるととられてもおかしくない「次期首相候補」の時代感覚の鈍さが、そもそも政治家として適切かという点にあろう。

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