「ハラカド」に出現した「何もない」広場
都内では2024年も次々と巨大な商業施設がグランドオープンしているが、集客できる施設がある一方で、集客できない施設もある。その成否を分けるポイントとは何か? 成功の法則はどこにあるのか? 商業施設を実際に訪れて探ってみよう。
最初に注目したいのは、4月にオープンした、原宿の「ハラカド」だ。原宿の中心部に誕生した商業施設で、対角線上には旧・東急プラザ原宿の「オモカド」がある。交差点の角に立っているからハラカド、というわけだ。地上7階・G階・地階と合わせ9フロアからなる施設で、高円寺の人気銭湯「小杉湯」もテナントとして入っていて、話題になっている。
筆者はオープンしてから1カ月後にこの場所を訪れたが、それでもまだまだ人は多く、特に若年層とインバウンド観光客の多さが目についた。
訪れて感じたのはこの施設には「余白」が多いということだった。
顕著なのは4階だ。ここにはフロア全体で1店舗しかテナントがない。そう聞くと、寂れたショッピングモールのように思えるかもしれないが、そうではない。あえて1店舗しかテナントを入れていないのだ。その代わりベンチや椅子などがフロア中に置かれている。
ここはパブリックスペース「ハラッパ」という場所で、その名の通り、原っぱをモチーフとした、まさに「余白」的なスペースなのである。フリースペースのように自由に使える場所、という感じ。
「ハラカド」は、こうした誰でも自由に座れる場所が多い。地下1階・小杉湯の横にもそのようなスペースがあり、こちらは畳が敷いてある場所も。
5階以上にあるレストランフロアでも座ることのできる場所が多く、屋上庭園もまた然り。しかも、屋上庭園のテーブルには電源が付いているところもあって、「どうぞ、いてください!」と言わんばかり。
商業施設といえば、ぎっしりとテナントが詰まっているのが普通。多くの客に訪れてもらうためにはそれがスタンダードな商業施設の作り方である、空きテナントは問題と見なされる。「余白」は歓迎されなかった節がある。
しかし、ハラカドを見ると、むしろ、そうした「何もしない」場所である「余白」をうまく作り出そうという意思を感じる。