朝鮮人参エキスを売り、書類を物色…

私設秘書は、取材のハードルとなっていた。公設秘書は2人までと国会法で定められていたが(当時)、議員の裁量で採用し、費用を負担する私設秘書に人数制限はない。統一教会信者の秘書は、教団の命令ならたとえ無償でも寝食を忘れて懸命に議員に仕える。また、取材する側にとっては、私設秘書は永田町ではなく議員の地元選挙区で活動していることが多く、実態を把握するのが極めて難しかった。

取材を進めると、このほかにも少なくとも2人の信者が国会議員の私設秘書になっていることが判明した。取材を進めるほど、教団信者の議員秘書に突き当たる。そんな印象を抱いたことを憶えている。

握手を交わす候補者
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石原慎太郎議員は、自らも統一教会信者の秘書を雇っていたと語っていた。

「ある秘書が1枚の書類を持ってきて、サインするよう求めたんだ。それを読むと『私は文鮮明氏の教えに完全に共鳴し……』といった内容だったね。それにサインすれば、統一教会員が全面的に選挙を手伝い、秘書も送りますという。この書類にサインした人たちが、当選後、勝共推進議員として公表されているんだろう。

私が雇っていた統一教会員の秘書は、後援会の支部長に、勝共連合の支部長になってくれと頼んだり、朝鮮人参エキスを売ったりと、勝手な行動もしていて、最後は不審な行動を目撃したので辞めてもらった。夜遅く事務所に電気がついていた。おかしいなと思って入ってみると、その秘書が書類を物色していたんだ」

日本の政治家は「勝共」に騙された

文鮮明教祖とも面識のある右翼の大物・畑時夫は、私の取材にこう述懐した。

「怪しげな宗教なら警戒しただろうが、共産主義に反対するという一点で自民党議員などは警戒心もなく近づいていった。勝共ということで、日本の政治家は騙されたのだ。これが統一教会ということなら、政治家もこれほどまでは接近しなかっただろう。雇うほうも問題だが、日本の政治にかかわる国会議員の秘書にいろいろな方法で教会員を送り込む統一教会のほうが間違っている。けしからんよ」