そもそも万博の責任者とはだれなのか

諦めではないが、何かモヤモヤしているのは、いったい誰が万博運営全体の責任者なのか、顔が見えないからなのではないか。

吉村知事も万博の細部については知らされていないようだ。松井氏も橋下氏も現役を引退している。安倍元首相は亡くなり、菅氏もあっという間に首相を降ろされてしまったから、「責任者出てこい」といいたくても誰にいったらいいのだろう。

批判は渦巻いているが、責任者の顔の見えない不思議な万博なのだ。

そうした中、週刊新潮(5月16日号)で、責任者を名指しして万博の中止を求めたのが建築家の山本理顕氏(79)である。

建築家ならではの専門的分野からの指摘は、これまでほとんどなかった。山本氏は責任者を名指しし、その批判には十分な説得力がある。したがって万博協会(公益社団法人2025年日本国際博覧会協会)もこれを無視できないはずである。

万博開催賛成、反対派も山本氏の意見にぜひ耳を傾けてもらいたい。

まず、山本氏はこう話す。

「会場をぐるりと囲む木造の大屋根、通称『木造リング』と呼ばれる『大阪・関西万博』のシンボルは、大阪へ万博を招致する最初の段階で作成された計画案には、明記されていませんでした」

「あれほど酷い計画は、建築家から見たらあり得ない」

「いったい誰がいつ、つくると言い出して建設することに決まったのか。その経緯も含めて責任者が不明で、信頼できる情報が発信されているとは言い難い。数々の疑問に対して、責任者がしっかりと答えてくれればいいだけなのに、それができていません」

3月5日、建築界のノーベル賞といわれる「プリツカー賞」を受賞した山本氏は受賞後のインタビューで、大阪・関西万博について問われた際、「あれほど酷い計画は、建築家から見たらあり得ない」などと舌鋒鋭く批判したという。

そこで新潮は、山本氏の真意を聞くべく、インタビューに赴いた。

「今回の万博における問題点は『責任者が誰なのか分からない』ということに尽きます。

(中略)国や大阪府・市などの行政のみならず、経団連など民間からもお金を投入し『国家事業』として進めているのですから、責任の所在は隅々まで明確でなければなりません。

私が建築家の立場から憂慮する『木造リング』についても、実際は誰が考案して設計したのか。会場の設営を進める万博協会が、いつ誰に依頼して承認したのか。常識的に納得できるような公的説明が皆無です」

1970年に大阪府吹田市で開催された日本万国博覧会のテーマ館の一部として建造され、万博終了後も引き続き万博記念公園に残された、岡本太郎が制作した太陽の塔
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