「国民と皇室との信頼関係」は築けているか

2023年2月23日、63歳の誕生日を迎えた天皇は記者会見で、皇室の情報発信について触れ、「国民と皇室との信頼関係を築く上で大事なこと」という認識を示した。

しかし、その天皇の“思い”は実現できているのだろうか。

ここで、われわれ一般国民は皇室情報をどこから得ているのかを考えてみたい。

新聞やテレビには天皇皇后が「お出まし」になる「全国戦没者追悼式・日本学士院授賞式・日本芸術院授賞式・日本国際賞授賞式など都内の式典等」「全国植樹祭・国民体育大会・全国豊かな海づくり大会・国民文化祭・全国障害者芸術・文化祭」(宮内庁サイトから)の時には通り一遍の記事や映像が流される。

また、大きな災害が発生した際には現地に赴き、犠牲者を悼み、被災者を慰め、救援活動に携わっている人々を励ます様子が報じられる。

秋篠宮家や他の皇族方も同様であるが、それだけでは“やんごとない方たち”の「実態」や「本音」を知ることはほとんどできない。

テレビではMBSが制作している『皇室アルバム』という番組が良く知られている。60年以上も続く長寿番組だが、毎週日曜日の朝6時半からでは、よほど皇室好きな人は別として、見る人はそう多くはないのではないか。

宮内庁のインスタには15万超の「いいね」がついたが…

テレビ東京でも『皇室の窓~皇室の雅な世界~』という番組を放送していたが、2023年1月1日で放送終了している。天皇の生前退位や皇太子の即位のような大きな儀式がなければ、新聞、テレビで皇室情報に触れる機会はごくまれなのである。

宮内庁もだいぶ前からホームページを開設しているが、そこにあるのは皇室の人たちの公式行事や週刊誌報道への抗議などで、皇室の人たちの生の情報を知ることはできない。

秋篠宮がいい出したといわれるが、2023年4月に宮内庁長官官房総務課に新たに「広報室」が設置され、初代室長には警察庁出身者の藤原麻衣子氏が就任。これからは積極的な広報や情報発信をしていくと発表された。

「みどりの愛護」のつどいの式典に出席された秋篠宮ご夫妻=2024年6月1日、和歌山市
写真提供=共同通信社
「みどりの愛護」のつどいの式典に出席された秋篠宮ご夫妻=2024年6月1日、和歌山市

その1年後に、天皇皇后の活動を紹介するインスタグラムが始まった。6月7日時点でフォロワーは140万人を超えている。

特に、能登半島地震の見舞いで天皇皇后が3月22日に石川県を訪れた11日後、インスタに被災者の苦労に耳を傾ける2人の写真が投稿され、15万を超える「いいね」がついたという。

宮内庁は「できるだけ、タイムリーに更新していく」と意気込んでいるようだが、どう好意的に見ても建前のきれいごと情報である。

しかも、これによって少しでも国民との距離が縮まるかと聞かれれば、私は疑問だと答えざるを得ない。