建築家なのに、設計は他社に委託する不思議

「旧ツイッターのXなどでは、万博の会場デザインプロデューサーである建築家の藤本壮介さんが、“自分が考案した”と言っているようですが、実際のところ“考案”とは具体的に何を指すのか。(中略)

実のところ『木造リング』の設計自体は業者に委託されています。2021年7月、『リング基本設計技術提案』がコンペ(プロポーザル)の形で公募され、万博協会は『東畑・梓設計共同企業体』を設計者として選定しているのです」

藤本氏は自分が考えついたというのに、設計は他人がしたほうがいいと考えたのはなぜかと山本氏は疑義を呈する。

「1970年大阪万博の丹下健三――。万博のシンボルを設計した者は、その栄誉とともに記憶されています。(中略)

翻って、今回の万博で藤本さんは会場のプロデューサーであると同時に、シンボルとなる建築の設計者の役割も担っている。自分ではそう言っているようですが、それならなぜ最も重要な『木造リング』の設計を他社に任せたのか。全く納得がいきません」

その上、設計コンペにおける審査のやり方が、驚くほど杜撰なものだと指摘している。

「全く公開性のない審査で決められています」

「これまで数多くのコンペを経験してきた私から見ても、公平な審査とはとても言えない。根拠不明の点数のみで、その内容は分からない。藤本さんによる選定理由の文章だけで、建築家たちは納得するだろうか。これが総工費350億円の公共建築の設計者選定の審査結果なのです」

このような審査に対して、コンペ参加者から3月に、以下のような怒りのメールが届いたという。そこには、

〈審査委員には、木造の専門家も、構造の専門家も、リユースや資源循環の専門家もいません。さらに、具体的にどのような提案がヒアリングに残ったのか、どのような議論が行われ最終案が選定されたかは、上記の簡単な記述だけでメディアに対して全くオープンにされていません。全く公開性のない審査で決められています。プロポーザル参加者としては(中略)納得のいかない審査結果を押し付けられた感が強いです〉

というものだという。

「あまりにも杜撰としか言いようがない。このコンペ要項を作ったのは藤本さんです。プロデューサーとしての責任感が欠如していると思います。

なるほど、東京五輪と酷似した構図ではないか。

さらに「木造リング」の構造計算や積算業務は極めて難しいという。