1970年の大阪万博をテーマにしたテレビドラマ「万博の太陽」(テレビ朝日)が放送され、SNSでは「なぜいま万博を賛美するのか」などの指摘が相次いだ。元テレビ東京社員で桜美林大学教授の田淵俊彦さんは「万博や五輪などの国家的イベントは、美談と感動の物語を作りやすい。制作者はスポンサーに喜ばれ、視聴率が獲れると考えているのだろうが、視聴者には見透かされている」という――。

万博ヨイショ番組と揶揄された「万博の太陽」

3月24日に放送されたテレビ朝日開局65周年記念ドラマプレミアム「万博の太陽」は、1970(昭和45)年にアジアで初めて開催された日本万国博覧会(大阪万博EXPO'70)をテーマにしたドラマである。中園ミホ氏がオリジナル脚本を書き下ろし、主演を橋本環奈氏が務めた。

テレビ朝日「万博の太陽」公式ウェブサイトより
テレビ朝日「万博の太陽」公式ウェブサイトより

東京の下町生まれのヒロインが1964年の東京オリンピックをみて、「世界中の人たちとつながりたい」という思いを抱き、大阪万博のコンパニオンとして働くことを目指す。番組ホームページによると、「ヒロインの青春と、その家族の物語を心温まるタッチで描き上げるヒューマン・ホームドラマ」だ。

テーマが万博であったため、SNSなどでは「なぜ2025年に大阪で開催予定の大阪・関西万博の問題が山積み状態とバッシングされているこの時期に、テレビ局はこんな『万博ヨイショ番組』を放送したのか」という批判も散見された。

そこで今回は、ドラマ「万博の太陽」を糸口にして、ドラマが「なぜ」「どうやって」企画され作られるのかを解き明かしながら、テレビ局の世間の感覚とはかけ離れた「特異な構造」や「特性」を浮き彫りにしてゆく。

まず、最初に言っておきたい。視聴者が「なぜこの時期に?」や「政府のプロパガンダでは?」と思うだろうことは、テレビ局は百も承知だ。つまり、「わかっていてやっている」のである。その原因は、以前、私が「プレジデントオンライン」で指摘してきたテレビ局の性癖とも言うべき最近の悪しき傾向にある。

そう、その傾向とは「マネタイズ」である。