ドラマを量産したがるテレビ局の意図
「黒船」のごとく日本に上陸した外資系配信プラットフォームと争うことを断念し、「共存」への道を選択したテレビ局は、いま必死に生き残り策を模索している。そんななか、「カネ」を稼いでくれる優良コンテンツとなったドラマをいかに量産してゆくかが、企業としての勝敗を決める重要な要素となった。
配信にコンテンツを回して手っ取り早く金儲けするためには、“安く”“多く”作るのが一番だ。そうなると、もともと少ない制作費で番組を作っていたテレビ東京は有利だ。事実、テレ東は深夜ドラマを多く生み出し、本数を稼いでいる。
このような事情から「1時間ドラマ」が増加傾向にある反面、2時間規模の単発ドラマは少なくなっている。単発ドラマは視聴習慣につながりにくく、配信にまとめて売ることもままならないため、効率が悪いと考えられているからだ。
しかし、冒頭で触れた「万博の太陽」は通常のドラマより制作費がかかる2時間ドラマだった。なぜわざわざ効率が悪い2時間ドラマにしたのだろうか。これを考えるにはドラマに冠された「開局記念番組」という仕組みを理解する必要がある。
「普通のドラマ」と「開局記念ドラマ」の違い
これはテレビ局にとっては重要な戦略の一つになっている。「開局記念番組」は通常の単発ドラマより多くの制作費が投入されることが多い。その額は、ドラマの場合は数億円規模になる。そしてそれだけ「制作費をかけられる」ということは、それ相当の売り上げをスポンサーから得ることができることを意味している。
今回のドラマ「万博の太陽」もテレ朝の「開局記念番組」である。視聴者が「なぜ2025年予定の万博が問題になっているこの時期に、『万博ヨイショ番組』をやるのか」と感じることをわかっていながら放送するのは、「営業利益」をあげるために他ならない。
単発ドラマが激減する状況のなか、「開局記念番組」という大義名分にのっとって堂々と金儲けができる。そんな旨い話をテレビ局が放っておくわけがない。それが最初に私が今回の番組化の原因として「マネタイズ」を挙げた理由である。
「美談」と「感動」はスポンサーが喜ぶと思っている
昨年の2023年は、民放で最初に開局した日本テレビの70周年であった。11年遅れて開局したテレビ東京も今年60周年を迎えた。各局の「開局記念番組」は目白押しだ。しかも、「周年期間」にはバッファがある。