テレビ局の有名女性アナウンサーの退社が相次いで報じられている。なぜキー局アナを辞めてフリーランスを選ぶのか。元テレビ東京社員で桜美林大学教授の田淵俊彦さんは「20代の時はテレビ局の顔、広告塔となるが、キャリアを積むほど居場所がなくなる。退社の背景には、女性アナを使い捨てにするテレビ局の問題がある」という――。

2023年に起きた女性アナウンサーの大量流出

今回は、テレビ局の人材問題として注目を浴びている「女性アナウンサーの大量流出」について検証してみたい。

アナウンサーはその局の「顔」である。アナウンサーのふるまいや物言いで局のイメージが変わるだろうし、視聴者がアナウンサーに抱く印象も局イメージに左右されるだろう。特に、女性アナは男性に比べて「華やか」で「目立つ」ので、局のイメージアップやイメージダウンに直結しやすい。それだけに、「看板」となる女性アナに辞められてしまうのは局にとっては手痛いはずだ。

アニメ「サザエさん」放送開始45周年記念「ありがとう45周年!みんなのサザエさん展」オープニングセレモニーで司会を担当したフジテレビの三田友梨佳アナウンサー=2015年2月4日、東京都中央区の三越日本橋本店
写真=時事通信フォト
アニメ「サザエさん」放送開始45周年記念「ありがとう45周年!みんなのサザエさん展」オープニングセレモニーで司会を担当したフジテレビの三田友梨佳アナウンサー=2015年2月4日、東京都中央区の三越日本橋本店

昨年2023年は、テレビ局人気女性アナの退社ラッシュが続いた。フジテレビの三田友梨佳氏、テレビ東京の森香澄氏、朝日放送のヒロド歩美氏、TBSの山本里菜氏、みな各局の看板アナである。

かつては、「アナウンサー」と言えば「局」に属するイメージが強く、「局を辞める」ことは「アナウンサーを辞めなければならない」ことを意味した。しかし、いまはそうではない。

なぜ「局アナ」を辞めて「フリーランス」になるのか

「ミタパン」と呼ばれた三田氏は芸能事務所に所属。森氏も芸能事務所に所属し、Instagramで約66万人、TikTokで約63万人のフォロワーを抱え、目標通りインフルエンサーとなった。ヒロド氏は芸能事務所の争奪戦も予想されたが、現在はフリーとして活躍している。山本氏は入社前に所属していたセント・フォースでフリーアナウンサーとしての活動を再開した。

2024年に入っても、女性アナの流出はとどまることを知らない。私の古巣のテレ東からも続々と女性アナの退社が決定している。3月末には「モヤモヤさまぁ~ず2」の3代目アシスタントとして人気が定着してきた福田典子氏が、6月末には「出没!アド街ック天国」や「ワールドビジネスサテライト」の須黒清華氏、「ゴッドタン」や「シナぷしゅ」の松丸友紀氏の両者がフリーアナウンサーに転身する。

須黒氏、松丸氏の二人はともにベテランで、私も仕事を何度かご一緒したが、実力、人柄共に抜群の逸材なだけに退社が惜しまれる。テレ東にとって「大きな損失」である。なぜそうなってしまったのか、テレ東はよく考えた方がよい。