例えばテレ東の場合は2024年4月~2025年3月が開局60周年にあたるが、放送としての期間は2023年10月~2025年3月と半年間多く設けている。その間に放送すれば(もちろん、すべての番組ではなく“選ばれた”番組だけだが)「開局記念番組」という「冠」をつけてスポンサーに高く売ることができるというわけだ。
しかし、読者は疑問に思うかもしれない。なぜテレビ局は、賛否両論が巻き起こる万博をテーマにしたドラマを企画・制作したのだろうか。
今回のドラマのテーマは1970年の大阪万博だが、テレビが“国を挙げての”イベントを番組を通じて盛り上げる同様の手法は、過去のオリンピックでも頻繁におこなわれた。
万博も、五輪も根っこは同じ
オリンピック時期の番組は選手にまつわる「美談」や「感動」一色で、マイナスイメージを伴う内容が流されることはない。映像のインパクトは強いため、見ている視聴者にも感動は伝播し、共感が広がる。そして高い視聴率につながる。多くの視聴者が見る番組のスポンサーは宣伝効果があったと喜ぶ。
テレビが「美談」や「感動」といったプラスイメージだけを放送するのは、視聴率を取って提供スポンサーを喜ばせるためだ。
そう考えると今回のドラマも、過去の万博をテーマとしているとはいえ、2025年万博を盛り上げようとしている企業に「開局記念番組」として提案するのにふさわしい内容であったと言えるだろう。社内の企画選定のおりにも、「これならスポンサーがつきやすい」と競合企画を跳ねのける充分な要素になったであろうことは、想像に難くない。
「開局記念番組」という「冠」の効果
目線をスポンサー側に移してみたい。彼らにはどんなメリットがあるのか。スポンサーはなぜ、通常より高めの「開局記念番組」のCM枠を買おうとするのか。それも賛否両論が巻き起こる万博をテーマにした番組を、という疑問だ。
まずは「視聴率が獲れると踏んでいるから」という答えが浮かぶ。だが、いまの地上波に視聴率を見込める番組はめったにない。結果的に「万博の太陽」のALL視聴率(個人全体視聴率。テレビ視聴率の主な指標となっている)は3.2%と、裏番組の「全日本高校先生クイズ」(TBS)や「家、ついて行ってイイですか?」(テレ東)よりも低い数字だ。
記念番組だからと言って、スポンサーが視聴率を度外視しているわけではない。だが、スポンサーが求めているのは「視聴率だけではない」。むしろ、視聴率と異なる基準で「CM枠を買うか、買わないか」を判断していると言ってもいい。