【法則4】共感上手からの頼みごとなら叶えてあげたくなる
まじめな人からすると、わがままな人は甘え上手で上司にも可愛がられているように見えるかもしれません。あの人だけ「いい仕事を任せてもらっている」「飲みに連れて行ってもらっている」と思い、「まじめな自分は損をしている」と感じるのです。甘え上手を心理学的に言えば、「共感しやすい」のです。言い換えれば「伝え方がうまい」とも言えます。自分の願いごとを誰かに叶えてもらうことはまったく悪いことではありません。上手にコミュニケートすれば誰も嫌な気持ちになることなく、懐に入ることができます。
関係性を深める手法の一つに「ポジティブフィードバック」(承認)があります。たとえば、「仕事もせずにお世辞ばかり言っているのに出世しやがって」と言われる人が身近にいたら、その人の会話パターンを研究してみてください。単に“よいしょ”しているだけではないはずです。おそらく上司がうまくいっていることや優れているところを上手に伝えているのです。「いいね」と思うことを言語化して伝えると、人は気持ちよくなり、こちらの意図を汲んで動いてくれます。
内容は何でも構いません。「あの商品はよく売れましたね」と事実だけを伝えればいいのです。すると、「この人は私を見てくれている」「私のことを評価してくれている」と相手は感じます。「褒める」とか「お世辞を言う」ことに抵抗がある人は、「ポジティブフィードバック」と言い換えることで実行しやすくなるはずです。
【法則5】同等の「お返し」より「ありがとう」だけで実は幸せ
まじめな人は、他人から無償で与えられることが苦手です。自分だけいい想いをすることに罪悪感を覚えてしまうのです。与えてもらうたびに「ズルしているのではないか」と感じて、モヤモヤします。その気持ちを晴らすために、与えられたものと同等のものを「お返ししなければ」と感じます。しかし、その必要はありません。「ありがとう」と感謝を伝えたり、親切にするだけで十分なのです。誰かに感謝するとエンドルフィンが、親切にされた側はオキシトシンが分泌されます。いずれも幸福物質ですから、双方が幸せな気分に満たされます。これで十分な「お返し」になります。むしろ、「このくらいの恩があるから、同等のものをお返ししなきゃ」と気負うと、かえって相手にもプレッシャーを与えることにもなり、精神的に負担へとつながります。「親切」と「感謝」で幸せになるのは脳の科学的な仕組みです。
人に親切にして「ありがとう」と言ってもらうことは、人間関係を深くするためにも有効な手段です。本来、人に親切にしてもらったら感謝する、感謝した人は別の人に親切を返して感謝される。感謝と親切はどんどん連鎖していくものです。会社であれば「親切」を「手伝う」と言い換えてもいいでしょう。チームの中で自分に与えられた役割をしっかりとこなせば「GIVE」ですし、他の人に頼られたときに力になるのも「GIVE」です。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年5月31日号)の一部を再編集したものです。