まじめであることを心理学では「べき思考」といいます。人は「こうあるべき」という考えを持っています。しかし、「その“べき”は本当にそうなの?」と考えてみると、そうではないことが多いのです。「べき思考」は、これまでの生活経験や家族や学校などの環境、さまざまなものから植え付けられています。もっとわがままに生きたいと思うなら、「自分らしく生きる」ことが大事です。「べき」を疑ってみる、「自分らしさは今の状態ですか?」と問いかけてみる。「四角四面でルールを守っていて楽しいの?」「そうじゃない自分もいるんじゃないの?」と考えてみることが大事です。

【図表】あてはまったら要注意! まじめさんの思考回路

なかには「まじめが自分の個性だ」と思っている人もいるでしょう。もしそうなら、毎日が楽しくてしかたないはずです。人は“自分らしさ”と違うことをすると苦しくなります。日々、ストレスを感じているとすれば、「まじめ」は「自分らしさ」ではありません。「まじめ」をやめて、もっと自分らしく生きたほうがあなたにとっていいのです。

いまは「個性」や「自分の意見を言うこと」に価値が見いだされる社会になりつつあります。昭和の時代であれば、年功序列で終身雇用だったため、コツコツまじめに努力していると、適度に昇進し給与も上がっていきました。これからは違います。転職も普通になるでしょうし、さまざまな職場に外国人が入ってきます。成果主義で評価されるので、「まじめ」にメリットはありません。自分らしくしたほうが評価されるのです。

自分らしくあるためには、「言いたいことを言う」練習をして、自己肯定感を高める必要があります。ただ、それを会社でいきなり実践するのは、お勧めできません。失敗したときに「おまえ何を言っているんだ」とトラブルに発展するからです。まずはプライベートや趣味、遊びの時間の中で、自分らしさを発揮することから始めてみるといいでしょう。仕事が終わってから、わがままなことをしてみてください。

まじめな人は、わがままを言うと人に嫌われたり、嫌な思いをさせる、あるいは自分が嫌な思いをすると感じています。しかしそれは伝え方やコミュニケーションの取り方の問題です。どのようなコミュニケーションの法則にしたがえば「脱まじめ」ができるかをお伝えしましょう。

【法則1】他人に合わせるより自分の意見を主張するほうが好かれる

まじめな人ほど相手に気を使って、自分の意見よりも他人の意見を優先してしまいがちです。相手に申し訳ないという気持ちが勝って、自分の本音を抑えてしまうという人も多いでしょう。実は自分の意見を積極的に伝えたほうが、双方にメリットがあります。

これを心理学で「自己開示の法則」といいます。「自己開示の法則」は、普段は言わない自分の秘密を打ち明けることで、互いに親密になれるという法則です。わかりやすいのは、恋人同士の関係です。「実は私、○○だったの」と言うと、相手は「そんなことまで相談してくれるなんて、心を許してくれているからだ」と感じて、距離が縮まります。表面的な話ばかりしていると、関係は深まりません。

実際に自分の本音を打ち明けるには勇気が必要ですが、「自己開示の法則」を知っていれば、一歩を踏み出しやすくなります。ただし、伝え方は大事です。

たとえば、同僚とランチに行くとき、自分の気持ちの伝え方次第で、関係がこじれることもあれば、深まることもあります。仮に相手が「イタリアンにする?」と言ったとして、それに合わせる必要はありません。ただ、「私はどうしても和食です」と言ってしまえば、相手は嫌な気分になります。私なら「そういえば、テレビで紹介されたすごい和食の店がここから3分くらいのところにあるんだけど、どう?」と言います。それなら相手も行きたくなるはずです。

まじめな人は和食かイタリアンか、どちらを選ぶかを「0・100思考」で考えてしまいます。そうではなく、和食かイタリアンかの綱引きで、少し自分のほうにたぐり寄せるのです。テレビで紹介された和食店の話は、自分の気持ちを主張したわけではありません。単に情報を提供しただけです。そのほうが相手は受け入れやすくなりますし、相手は「この人は和食が好きなんだろうな。せっかく教えてくれたんだから和食の店にしよう」と関係が深まるかもしれません。

人は判断材料が多いほど正しい判断ができます。しかし、判断材料が少ないと、一つの情報に結果が左右されます。仕事の判断でも同じです。AかBを選ぶときに「Aに多くのメリットがある」との情報があれば、Aに決まります。それを覆すには、Bのメリットを増やせばいいのです。あなたがB案を推したいと思うなら「私はB案です」と主張するのではなく、客観的なメリットを提供する。すると、A案を支持していた人も「それは知らなかった」とB案に引き寄せられます。自分の思うほうに引き寄せるための情報を提供するのが一番の解決法です。