子供たちの野球離れが止まらない。ライターの広尾晃さんは「大谷翔平選手が全国の学校にグローブを配ったように、多くの野球関係者が危機感を持っている。だが、せっかくのグローブを職員室に飾ってしまう小学校があるように、そうした思いが届かない状況がある」という――。

この1年間、世間の話題は野球一色だった

WBCのあの喧騒と興奮から早くも1年の歳月が経過した。しかし世界一の余熱は今も残っている。

2023年3月21日、フロリダ州マイアミのローンデポ・パークで行われたWBC決勝戦で、アメリカチームを破り、喜ぶ日本チームの大谷翔平
写真=AFP/時事通信フォト
2023年3月21日、フロリダ州マイアミのローンデポ・パークで行われたWBC決勝戦で、アメリカチームを破り、喜ぶ日本チームの大谷翔平

WBCでMVPを受賞した大谷翔平は、MLBのレギュラーシーズンでも打っては44本塁打で本塁打王を獲得、投げても10勝を挙げ、2021年以来の2回目のMVPに輝いた。

さらにオフにはロサンゼルス・ドジャースに10年7億ドル(1000億円超)と言う史上最高額でFA移籍を決めた。

また同じくWBCで先発投手として活躍したオリックスの山本由伸は、NPBのペナントレースでも無双の活躍でチームをリーグ3連覇に導き、自身も3年連続で沢村賞とMVPをダブル受賞。オフには大谷翔平のいるドジャースに12年12年総額3億2500万ドル(約465億円)の契約を結んだ。

また2022年までオリックスの主軸だった吉田正尚はWBCで打点王に輝き、新加入したボストン・レッドソックスでは中軸打者としてチーム最高の打率.289を挙げた。

NPBのペナントレースでは新任の岡田彰布監督率いる阪神タイガースが2005年以来のリーグ優勝、同じ関西のオリックス・バファローズを日本シリーズで下し、1985年以来38年ぶりの日本一になる。岡田監督が口にした「ARE」は流行語になった。

さらに高校野球では「エンジョイ・ベースボール」を掲げる神奈川県の慶應義塾高校が107年ぶりに優勝。坊主頭ではなく自由な髪型で選手の自主性を重んじる指導と、甲子園での大応援団は、一部の批判を招きはしたが、大きな話題となった。

今年3月になって大谷翔平の結婚、さらには通訳水原一平氏のスポーツ賭博疑惑から解雇と、野球関連の大きなニュースが連日報じられている。2023年から2024年にかけて、世間の話題は「野球一色」だったかのように思われる。

2023年の視聴率ランキングはWBC一色

それを裏付けるデータがある。今年の1月にビデオリサーチが発表した2023年の地上波テレビ番組の視聴率ランキングだ。

昨年、関東圏で放送された15分以上の地上波番組の視聴率では、上位10位までのうち7つがWBC関連。20位まででは12、30位まで(32番組)では18がWBC関連だった。

しかも本番の試合だけでなく「直前情報」「もう一度」、強化試合の「日本×阪神」までもがランクインしている。