「野球離れ」に効果はあったのか

それだけではない。ここにランクインしている「報道ステーション」「サタデーステーション」「サンデーステーション」「ひるおび」というニュース番組は、すべてWBC期間中のものだ。こうしたニュース番組でのWBCの話題も高視聴率だったのだ。

それを含めれば30位までの32番組中、22番組がWBC関連だったということもできる。

本来は舌鋒鋭く政治問題、社会問題を批判するはずのニュース番組のコメンテーターなども、大谷翔平を絶賛するシーンがしばしば見られたものだ。

今回のWBCは、MLB機構とMLB選手会が出資するワールド・ベースボースボール・クラシック・インク(WBCI)の主催だった。東京ドームで行われた東京ラウンドは、WBCIと読売新聞社が共催した。また侍ジャパンを運営するNPBエンタープライズは代々日本テレビと読売新聞から社長が出ている。

地上波の放映権は、テレビ朝日とTBSが獲得。放映権関連ビジネスは電通が仕切って、読売側は手が出せなかった。

テレビ朝日とTBSは、放映権が高額だったためにここまでの高視聴率をとっても採算的には厳しかったとの見方もあるが、それにしてもこのインパクトは強烈だ。2026年の次回大会の放映権をどの局が獲得するかも注目される。

事程左様に、昨年は「野球の年」だったのだ。筆者は、こうした野球ブームが「野球離れ」を叫ばれて久しい昨今の野球界に大きな影響を与えるものと期待した。だが……。

増えるどころかむしろ減った

過去5年の小学校(スポーツ少年団学童野球)、中学校(中体連野球部部活)、高等学校(日本高野連)の男子野球部員の推移は以下のようになっている。

【図表】2019~2023年 小学校、中学校、高校における男子野球部員数の推移
スポーツ少年団学童野球、中体連野球部部活、日本高野連資料より筆者作成

2023年3月のWBCを受けて、新年度に野球を始める生徒が増えるかと思ったが、中学、高校はむしろ部員数が減っている。

高校野球では1年生部員は2022年の4万5246人から4万5321人と75人増えているが、これは微増であり、WBCの影響とは言えないだろう。

小学校の数字は毎年1年遅れとなるので発表されていないが、小学校チームの関係者に話を聞くと「むしろ減っている」「今年は10万人を割り込むのではないか」と危機感を募らせる声が多かった。

中学ではこれらの数字のほかに硬式野球部がある。主として4団体あり、合わせて約5万人とされる。4団体の代表にも問い合わせたが、ボーイズ、リトルシニア、ヤングの各リーグは「増えていない」。ポニーは「選手数は増えているがWBCは関係がないと思う」との回答だった。

日本中がこれほど「WBC」「野球」で盛り上がっても、子ども、若者の競技人口拡大にはほとんど響いていないのだ。