自らの行動力を示すだけではなく、人々に行動を促すメッセージを放つリーダーシップに惹かれた。63年に住友林業に入社したときの身上書に尊敬する人はケネディと書いたほどである。しかしその年の11月22日、ケネディは暗殺されてしまう。凶弾に倒れる瞬間のニュース映像が何度も流されたが、ショックというより、アメリカの巨大なダイナミズムのようなものを感じた。
ケネディの死から数カ月後には『ケネディ演説集』が日本でも出版されて、私はすぐに買い求めた。大統領就任演説はもちろん、アメリカン大学の卒業式での演説(『平和の戦略』)や、国連総会の演説(『平和の建設』)など、読み返して噛み締めるほどに、大変なリーダーを世界は失ったのだと思った。
海外特別員枠で採用された私は、アメリカのシアトルに2回駐在して計11年仕事をしている。私がケネディから感じ取った信仰心に基づく正義感は数多くのアメリカ人の中にも見出すことができたし、「I respect Kennedy」というと非常に親近感を持って接してくれた。
ケネディの言葉は私の人生の中に息づいてきた。今は新入社員へのメッセージや新任管理職研修などでスピーチする際には、ケネディの“Ask not what your country”をよく引き合いに出す。会社が何をしてくれるかではなく、自ら会社のために何をできるか――能動的、主体的に行動して住友林業という会社で悔いのない人生を過ごしてほしい、と。
※すべて雑誌掲載当時
(小川 剛=構成 坂本道浩=撮影)