▼関谷さんからのアドバイス

同時通訳者 関谷英里子 せきや・えりこ●アル・ゴア元米副大統領やダライ・ラマ14世など、一流講演家の同時通訳者および翻訳家として活躍。著書に『ビジネスパーソンの英単語帳』など。

プレジデント読者であれば、すでに6年から8年は英語を勉強しているはずですから、基礎英語から始める必要はありません。その場に外国人がいると、自分から“I don't speak English.”と潔く宣言する人がたまにいますが、それを聞いた外国人は、この人は「英語を話せません」とちゃんと英語で伝えているのに、なぜ話せないなんていうのだろうと、みな不思議がります。自分はある程度の英語なら話せるのだと自信をもってほしい。

だいたい英語というのは、主語が何をしているのかさえわかれば意味がとれるし、通じる言語です。冠詞がaだろうがtheだろうが、三単現のsが抜けていようが、そんなことはたいした問題ではないのです。ですから教材も、初心者だからとやさしいものを選ばなくても大丈夫。むしろ日本人の場合は、少し背伸びをしたほうがいいと思います。

私のおすすめはスピーチ集です。最近のものであれば、ミシェル・オバマが大統領選挙の予備選で行った応援演説。ほかにも、ビジネスパーソン向けとして、スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行った名演説もおすすめです。また、誰でも知っている有名なものでは、マーティン・ルーサー・キングやJ・F・ケネディの同じく名演説など。CDになったり、いまであればネットで配信されたりしているものがいくつもあるので、そのうちのひとつを選んで繰り返し聴くのです。

聴き方は、以下の順番で行います。(1)聴きながら文章を目で追う。(2)聴きながら文章を同時に読む。(3)文章を見ないで聴こえてくる音を真似て発音する(シャドーイング)。(4)聴きながら書き取りをする。

英語スピーチ集は使えるフレーズの宝庫
おすすめの5冊。『Perfect Phrases for Managers & Supervisors』『Inside Steve's Brain』(ともに洋書)、『オバマ大統領演説』『オバマ演説集』『The Penguin Book of 20th-Century Speeches』(洋書)。

最後の(4)ができるようになれば、英語力は飛躍的にアップしていると思って間違いありません。初心者だからとの躊躇は不要です。スピーチには聴衆の誰にでもわかるよう、平易なフレーズが繰り返し登場しますし、心に響く洗練された言い回しがもたくさん使われています。

それから、インプットだけでなく、アウトプットを必ず行うことも大切です。英文を覚えたら、その英文を使って文章をつくってみるといいでしょう。また、電車に乗ったら、思いついたことを頭のなかで英語にするというのを習慣にするといいと思います。ほかにも電子辞書を携帯して、これは英語で何というのだろうと思ったらすぐに調べたり、自分で単語帳をつくったりというのはすぐに実践できます。英語力アップを目指す人はぜひ試してみてください。