三菱総合研究所理事長 
小宮山 宏

1944年、栃木県生まれ。都立戸山高校卒。東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻博士課程修了。工学博士。2005年、同大総長に就任し、改革を推進する。09年より現職。東京大学総長顧問を兼務。著書は『東大のこと、教えます』『低炭素社会』など多数。

もともと私は乱読派。特別な一冊というより、いろいろな本から少しずつ影響を受けている。夏目漱石は全部読んだし、大江健三郎もほとんど読んでいる。初めて読んだ小説らしい小説といえば、漱石の『坊っちゃん』。自分の思いの原点だ。数年前に読み直したのを含め、10回以上は読んだだろうか。古典落語みたいなもので筋もセリフもほぼソラで言える。

よく「古典を読め」という人がいるが、その当時の時代や文化を共有できなければ共感できないし、感情移入も難しい。その点、漱石は明治維新から続く日本の心象風景を現代的に書いていて、今読んでも違和感がない。