21世紀になって“幸せの方程式”が変化しつつあります。20世紀は、「モノの豊かさ」が幸せを左右する時代でした。しかし、モノが充足するにつれて買いたいものがなくなり、余ったお金が金融を肥大化させてリーマンショックを引き起こしました。もはや多くの人が、モノやお金ではなく「心の豊かさ」が大事であると気づき始めています。
心の豊かさを一言でいうと「量より質」です。たとえば日本人男性の平均寿命は約79歳(2009年)ですが、WHOが2004年に発表した日本人男性の健康寿命(自立的な生活が送れる年齢)は約72歳と、7年も開きがあります。女性も同様な傾向にあり、人生の晩年に何年間も人間の尊厳を傷つけられるような生き方をせざるをえません。これが、はたして本当に幸せなことなのか。21世紀の幸せの方程式でいうと、健康寿命を延ばして人間本来の生をどうやって全うするか、「ウエー・オブ・ライフ」を追求することが、幸せへとつながるような気がします。
ただ、人間本来の生き方を追い求めるにしても、環境問題や食糧問題、財政金融問題など、現実にはさまざまな制約条件があります。こうした条件の中で、心豊かなライフスタイルを築きあげるにはどうすればよいのか。それを考えるヒントになるのが、富山和子さんの『川は生きている』『道は生きている』『森は生きている』のシリーズ3部作です。
それぞれ簡単にご紹介しましょう。『川は生きている』は、多くの恵みを運んでくれる一方、氾濫によって暮らしに大きな影響をもたらす川と、日本人がどのように付き合ってきたのかを教えてくれます。