大学では物理学を専攻した。そのためか、森羅万象はことごとく“巨大な機械”であり、要素に分解し分析していけば「すべては解決できる」という非常に強い信念を持っていた。もちろん経済学や生物学なども例外とは思わなかった。だが、26歳のときにその考えを改めることになった。医学博士号を取るために、生理学・医学を基礎から学んだからだ。

堀場製作所最高顧問 
堀場雅夫 

1924年生まれ。旧制私立甲南高校(現甲南大学)をへて、46年京都帝国大学理学部物理学専攻卒。学生時代に堀場無線研究所を創業。53年堀場製作所を設立し、社長に就任。78年会長、2005年から最高顧問に。06年に分析化学の世界で最も権威ある「ピッツコン・ヘリテージ・アワード」を受賞した。

当時の私は20歳で会社を興していたこともあり、正直なところ学位を取るためだけに通学して勉強するような時間的余裕などなかった。しかし、ものは考えようだ。「社外留学するとか特別に論文を書くための研究などしなくても、毎日の仕事に打ち込みながらだって博士号は取れるものだ。おれもやるから、みんなも頑張ろう」と鼓舞したのだった。