私がコルビュジエと出会ったのは必然だったのかもしれません。もともと学生時代は文学青年で、小説家を志していました。フランス文学に傾倒して、当時の愛読書といえばサルトルやカミュでした。ところが、大学2年目のときに肋膜炎を患って自宅静養に入り、大学は留年することに。それを機に家業を手伝い始めたところ、実業の面白さにすっかり目覚めて仕事にのめり込んでいきました。

森ビル社長 
森 稔 

1934年、京都府生まれ。神奈川県立湘南高校を経て東京大学教育学部卒。59年森ビル設立と同時に取締役、93年より同社代表取締役社長。98年経済戦略会議委員、2001年総合規制改革会議委員等を歴任。

とはいえ、文学青年だったため、建築を本格的に勉強したことはありません。そこで建築や都市開発の本を読み漁るようになり、ル・コルビュジエの『輝く都市』を手に取ったというわけです。