当時から、私がやっていたのは共同建築です。自社の土地にポツンポツンと戸建てや鉛筆ビルを建てるより、隣接区のみなさんに声をかけて、ワンブロックで近代的なビルを建てたほうが土地を効果的に活用できます。都市開発と呼べる規模ではありませんでしたが、それでもこの町をつくりなおそうという気概は持っていた。「いつか輝く都市をつくろう」を合言葉のようにして頑張っていたことを思い出します。
現在、私は「垂直の庭園都市(ヴァーティカル・ガーデンシティ)」という都市モデルを提唱しています。実際に六本木ヒルズに足を運ぶとイメージしやすいと思いますが、垂直の庭園都市は、職、住、遊、商、学、憩、文化といった都市機能を縦に重ね合わせて集積させた超高層コンパクトシティです。超高層化は、細分化された土地をまとめて容積率を高めると同時に建蔽率を最小限に抑えることで実現します。それによって地上に緑化できる土地を増やし、豊かな生活空間や時間を生み出すことが可能になります。
振り返ってみると、これはコルビュジエの理想の都市像に非常に近い。いま改めて『輝く都市』を読んでみると驚かされます。なんだ、私が提唱していることは、コルビュジエが半世紀も前に言っていたことではないか、と(笑)。
もちろんコルビュジエの思想から進化した部分はいろいろあります。例えば彼は職住近接を主張しましたが、私が提唱しているのは職住の複合化です。またテクノロジーの発達によって、より地下を深く活用したり、地上に人工地盤をつくって、その上を大規模に緑化しようという発想も加わった。
そもそもコルビュジエの生きた20世紀とは、時代背景が異なります。当時は工業化社会で人口爆発期にありましたが、現在は知識情報社会で、人口減少を迎えたなかで都市再生を考えなくてはいけない。その意味で相違点があって当然であり、これからもコルビュジエを超えるような21世紀の「輝く都市」を提唱していきたいですね。