「おまえたち、この本を読んでみろ」。たしか、私が北海道大学2年生のとき、つまり1969年に、教授から講義中にこう勧められたのが『沈黙の春』でした。

キリンビール元社長 
松沢幸一

1948年、群馬県生まれ。県立館林高校卒。北海道大学農学部卒業後、73年同大大学院修士課程修了。同年キリンビール入社。主に生産技術部門を歩み、ドイツへの留学も経験した。生産統轄部長などを経て、09年~12年3月社長。

アメリカのアポロ11号が月面着陸を果たすなど、当時は“科学万能”と考えられていた時代でした。西側先進国の生活はどんどん豊かになり、なかでも日本は工業技術をベースに突出した経済成長を遂げていました。『沈黙の春』は、科学万能という人類の考え方に警告を発した、という点で大きな意義をもつ書であると思います。