大きな改革では「断行」が必要となる。だが、そこに「熟慮」がないと改革は失敗する。日本にとって転換点である2010年は、「熟慮断行」が鍵となる、と筆者は説く。
鳩山総理には熟慮が足りなかった
普天間問題で、鳩山総理が迷走している感が強い。核セキュリティサミットでも、オバマ大統領にかなりつれない態度をとられ、「腹案がある」と党首討論でわざわざいったのにアメリカは実務者協議にも入ってくれない。
私は、もちろん防衛や外交の専門家ではない。しかし、大きな組織で長い年月に亘ってひずみが積み重なってきた重要問題の改革について多少調べた経験からすると、あらためて熟慮断行という言葉の重みを感じている。鳩山総理には、断行する気持ちは強かったが、熟慮の部分が少なかったのだろう、と思うのである。
普天間基地には、沖縄のみならず、戦後の日本の安全保障と基地問題のひずみが巨大に詰まっている。だからこそ、橋本政権の下で基地返還の動きが具体化して、移転先まで一応決まった際に、大騒動があり、歴史的な決断といわれたのである。第二次世界大戦の敗戦後の日本の苦悶が詰まったような基地がおそらく普天間なのである。
その基地の移転問題に、政権交代という歴史的事件が複雑にからんでしまった。その交代のシンボルとして、自民党政権下の移転先決定を覆すということが意味をもってしまったのが、不幸だったのであろう。スケールははるかに小さいが、企業組織でもトップの交代とともに、その権力移行を知らしめるような方針変更や人事異動があることが多い。それが、パンドラの箱を開けるかのごとくインパクトをもってしまい、収拾がつかなくなることもありそうである。
小泉政権下の郵政改革も、必要な熟慮が十分にはなかったままの断行だったような気がしてならない。この場合も、自民党内の権力争いの象徴として郵政がターゲットとなり、改革自体が自己目的化した感が強かった。だからこそ、参議院で郵政改革法案が否決されたという理由で衆議院を解散するというねじれをわざわざ起こしたのである。当時から私はこの選挙はおかしいといってきたが、結果は自民党の歴史的大勝。唖然としたものである。しかし、その反動が昨年夏の総選挙での自民党の歴史的大敗につながったようだ。まさに悪銭身につかずという古いことわざの通りになってしまった。