「トランプは面白いから」
最後に、最も説明しがたいが、トランプ氏がここまで人気を集める理由をお話ししたい。
「NY Future Lab」のZ世代はこう言う。「トランプは面白いから」
これを聞いたのは初めてではない。2016年の大統領選でも、タイムズスクエアで出会った若者が「トランプは面白い」と言っていたことを思い出す。
トランプ氏は支持者集会で、音楽と共に踊りながら登場するのがお決まりだ。そもそも彼は若い頃は、マンハッタンのクラブでよく姿を見かける夜遊び好きのセレブだった。それがNBC局のリアリティ番組『アプレンティス』の「You Are Fired(お前はクビだ)」の台詞で全国区の人気を得た。カリスマ性があるエンターテイナーで、理屈抜きに人の心を掴むツボを心得ているポピュリストなのだ。
感情に訴える演説、社会の不安を煽る扇動的な発言、虚偽の主張で大衆の心を掴み、自らの権力を強化する。ポピュリストの域を超えた、デマゴーグと呼ぶ人もいる。
支持者を前にした強烈で過激な発言の数々がそれだ。
“もしトラ”は、日本の防衛の危機でもある
「不法移民は人間ではない」
「議会襲撃で投獄された人々は、実は愛国者でバイデンの人質だ。大統領就任初日に恩赦する」
「自分が当選しなかったらアメリカは流血の惨事になる」
「NATO加盟国がお金を払わなければ、ロシアにいくらでも好きにしていいと伝える」
支持者には大ウケだが、不法移民を非人間化することで合法な移民までも危険に晒し、白人至上主義者の暴力を煽り、法の信頼を失わせ、国際秩序をも混乱に陥れる非常に危険な発言だ。またトランプ氏は先日、独裁者として悪名高いハンガリーのオルバン首相を歓待し「素晴らしいリーダー」と絶賛した。
再選されればアメリカの民主主義は脅かされる。ウクライナや台湾、そして日本の防衛さえ危うくなると考えるのは、決して大袈裟ではない。
こうした危機感が、バイデン氏を再び浮上させるのか、それとも何が何でもトランプ共和党に勝たせたいという力がそれを凌ぐのか? 大統領選までの今後7カ月は波乱が続きそうだ。