岸田内閣の支持率が政権発足以来、最低記録を更新した。毎日新聞の世論調査(2月17日、18日実施)によると、支持率は14%で、前回調査から7ポイント減少した。ジャーナリストの鮫島浩さんは「裏金問題があっても、野党への期待感や政権交代の機運は盛り上がっていない。岸田首相や自民党に危機感がないのは、支持率がいくら落ちても政権交代が起きない構造的な問題があるからだ」という――。
衆院予算委員会で挙手する岸田文雄首相=2024年2月26日、国会内
写真=時事通信フォト
衆院予算委員会で挙手する岸田文雄首相=2024年2月26日、国会内

支持率が急落しても緊張感のない岸田政権

岸田内閣や自民党の支持率は裏金事件の大逆風を受けて過去最低水準に落ち込んでいる。ところが、野党への期待感は高まらず、支持率がいくら下がっても政権交代の機運は盛り上がっていない。

自民党が裏金事件の全容解明や政治資金の透明化にまじめに取り組まず、政治責任をあいまいにしたまま幕引きを図ろうとしているのは、国民の怒りが爆発しても、次の衆院選に惨敗して野党へ転落するリアリティーがなく、切迫感を欠いているからだ。

野党が自民党に代わる政権の受け皿になり得ていないことが、この国の政治から緊張感を奪い、政治腐敗が続いている最大の理由である。

野党の低迷について「野党がバラバラだからだ」「野党第1党の立憲民主党の泉健太代表が首相候補として不人気だからだ」など、さまざまな要因が指摘されている。いずれも的を射た分析であろう。

しかし、より根源的な要因は、政治制度にある。小選挙区制度と比例代表制度を組み合わせた衆院の選挙制度が、野党乱立による「自民一強・野党多弱」を生み出し、政権交代を起こりやすくすることで政治腐敗を防ぐ二大政党政治のダイナミズムを失わせている。

自民党の万年与党体質が「失われた30年」を招いた

ここまで自民党不信が高まりながら政権交代の機運が醸成されない現状は、ふたつの政党が競い合い、政権を交互に担うことで政治の健全化を目指した1990年代以降の政治改革が完全に頓挫したことを端的に物語っている。

日本がこの30年に経済大国から転落したのは、自民党に対抗する政治勢力が育たず、その結果として自民党は万年与党体質を引きずり、前例踏襲を重ね、少子高齢化や第三世界の台頭が進む時代に対応できなかったことに最大の要因があると私は考えている。

今回の裏金事件を、この国の政治制度の欠陥を見直し、政治が活力を取り戻すための制度変更のスタートとしなければならない。1990年代以降の政治改革が目指した二大政党政治の歩みを改めて検証し、抜本的な改革案を提言したい。