「タイ人の入国拒否」が相次いでいる
不法滞在者が増加する中、韓国ではタイ人の入国を拒否する事例も相次いでいる。
23年10月には、入国拒否されたタイ人のエピソードがX(旧ツイッター)で拡散され、「#韓国旅行禁止」「#韓国入国管理局」のハッシュタグがトレンド入りする事態となった。
タイの英字紙ネーションによると、入国に必要な書類を全て揃えていたにもかかわらず、持ち込む金額が多い、あるいは韓国への渡航頻度が多すぎるといった理由で、入国を断られたケースもあるという。
タイ人の不法滞在者の多くは、タイでの月給が約1万バーツ(約4万円)程度の、低所得者層だといわれている。
タイの公共放送が運営する英字ニュースサイト「タイPBSワールド」は22年8月、「なぜ韓国はタイ人不法就労者の渡航先なのか?」というリポートを配信。その中で、「タイの最低賃金は1日330バーツである一方で、韓国なら同2054バーツが稼げる(同月時点)」と約6倍の差があると指摘した。
薬物犯罪に手を染めるタイ人も
また、韓国で不法就労しようとしたタイ人の話として、「月給1万バーツでは、生活がとても苦しい。稼ぎを得たくて、強制送還のリスクを冒しても韓国で仕事を探したい」とのコメントを紹介している。
手早く収入を得るため、韓国で薬物犯罪に手を染めるタイ人も相次いでいる。
韓国中央日報の英字ニュースサイト「Korea JoongAng Daily」によると、韓国における外国人の薬物犯罪者の数は、18年の596人から22年には約3倍の1757人に増えた。このうち、不法滞在している外国人の薬物犯罪者数は、172人から945人と約5倍になった。
18年から23年5月までに摘発された不法滞在の薬物犯罪者3400人のうち、7割以上にあたる2543人がタイ人だったという。
韓国でタイ人の薬物犯罪に関する捜査を担当したあるタイ語通訳者は、「こうした事件の増加に伴って、通訳者として警察に協力を求められる機会が増えている。犯罪に関わっているのは多くの場合、貧困層のタイ人で、稼いだ金はタイに住む家族に仕送りしている」という。
韓国の法務部(日本の法務省に相当)は23年11月、「外国人の不法滞在は国内の労働市場を歪め、薬物犯罪などの凶悪犯罪を通じて国民の安全を脅かす可能性がある」と指摘。「これに備えて入国審査を行うとともに、不法滞在の意思のない人が入国拒否されないよう、より一層の注意を払う」と説明している。
韓国が外国人労働者の受け入れをいま以上に進めるためには、外国人の適切な受け入れシステムの確立、および治安の維持が必要になってくる。
韓国が少子高齢化における労働者不足に対応できるかどうかは、その成否にかかっているとも言えるだろう。