韓国の伝統的価値観が影響している
なぜ韓国は急激な少子化に陥っているのか。ジェトロ(日本貿易振興機構)調査部中国北アジア課の益森有祐実氏は、23年5月に発表した報告書で、「若者が結婚や出産を望まない要因として、就職難や都市部の地価高騰、多大な教育費負担といった経済的要因や、韓国独自の文化・価値観などが挙げられることが多い」と指摘する。
「韓国独自の伝統的価値観(儒教思想など)では、結婚があってこその出産であり、事実婚は一般的ではないため、結婚する男女の減少によって出産率も低下していることがうかがえる」とした上で、「結婚挨拶の負担は依然として存在し、男性が女性の実家を訪れる際に、職業は何か、家は購入できるのか問われる。しかし、近年の都市部の地価高騰のため家を買えず、結婚自体を断念する若年層が増えている」と分析している。
「8割がベトナム人やタイ人」の漁場も
韓国政府は06年に少子化対策「低出産・高齢社会基本計画」を発表し、5年ごとにその内容を更新している。21年までに総額280兆ウォン(約31.2兆円)もの巨額予算を少子化対策に投じているが、出生率の低下を食い止めることはできなかった。
少子化に伴い、労働者の確保が深刻な問題となった韓国では、外国人労働者の受け入れが進められている。
少子化対策が本格化した04年には、非熟練外国人労働者の受け入れ制度、雇用許可制が施行された。これを機に韓国では外国人就労者が増え、23年5月時点での外国人就労者数は前年比9.5%増の92万3000人と、過去最多となった。
特に農業や漁業といった第一次産業では、深刻な人手不足が発生しており、対策として外国人労働者の導入が進められたが、それでも労働力不足は解消されていない。
江原特別自治道で発行されている地方紙「江原道民日報」は1月8日、「月給400万ウォンで部屋と食事を提供しても、外国人労働者は不足している」と題する記事を配信した。
江陵市の港町では深刻な労働者不足に直面しており、ある漁場では労働者約30人のうち、8割がベトナム人やタイ人といった外国人が占めていると報じた。