なぜ私たちは惹きつけられるのか
大食い企画は、なぜこれほど私たちを惹きつけるのか? 思うにそれは、同じ素人のすごさのなかでも、より身近なすごさが感じられるからではないだろうか。
「TVチャンピオン」で言うなら、さかなクンのような専門知識や和菓子職人のような職人技ともまた違い、大食いは誰にとっても日常的に身近な食事の延長線上にある。だからよりわかりやすく、シンプルに「すごい」と思える。
実際、スターとなったフード・ファイターのほとんどは、一見どこにでもいそうな雰囲気の人ばかりだ。体形も力士やレスラーのようなひとはいない。ギャル曽根や赤阪尊子然り、小林尊然りである。そんな普通のひとが、小林尊のように巨漢ぞろいのアメリカ人たちを圧倒する姿は快感以外のなにものでもない。
また男女差がほとんどないのも面白い。先ほどふれた藤田と赤阪の細巻き対決がそうだったように、男女が対等に戦える。
むしろ「魔女菅原」こと菅原初代、「アンジェラ佐藤」こと佐藤綾里、「もえあず」こともえのあずきなど、歴代有名フード・ファイターを見ると女性のほうが目立つほどだ。
要するに、通念を覆すとともにボーダレスなバトルが展開されるのが大食いということになる。そしてそこには人間の極限の姿がもたらす思いもかけない驚きと感動がある。まさにテレビ向きの企画と言えるだろう。