アリのコロニーを調べてみたら、意外とさぼっている連中がいた。一生働かない者さえもいる。それでもコロニーはちゃんと機能している。
それならば人間の場合にも同じことが言えるかもしれない。会社でもさぼっている者がいたっていいのではないだろうか? アリに見習おうじゃないか!
こんなふうに考える方がおられるかもしれない。しかし残念ながら話はそう単純ではないのである。アリのコロニーと人間の会社などでは決定的に違うことがある。
それはアリのコロニーは、非常に近縁な血縁者たちからなる集団だということである。
誰かが繁殖してくれれば、遺伝子のコピーを残す上で、自分で繁殖したのとあまり違いはないということになるのである。
メスで繁殖するのは普通、女王アリだけである。
そして巣の中にいる働きアリ(メス)もオスアリも、同じ女王アリが産んだキョウダイに当たる。そして将来繁殖することになる処女アリも女王アリの娘である。
オスアリは普段、何もしていないが、一生に一度だけ、繁殖シーズンに他のコロニーの女王アリ(その繁殖シーズンまでは処女アリだった)と空中で交尾。交尾が終わるや否や、死んでしまう。もっともオスアリならすべて交尾できるのかと言えばそうではなく、交尾に成功するのはごく一部である。
このように、繁殖をするかどうかも含め、社会の中に役割分担が生まれるのも、非常に近い血縁集団であればこそである。何かの仕事を自分が行なっても、誰かが行なっても遺伝子のコピーを残すうえでさほど違いはないからである。
さぼっている連中がいてもお咎めなしなのも、やはり近い血縁集団内での話だからである。
そうすると、人間の会社、特に大きな会社などはどうかと言えば……。