なぜ東海道新幹線の「のぞみ」は静岡駅に停まらないのか。鉄道アナリストの鐵坊主さんは「静岡駅の乗客数は2万人で規模は少なくないが、人口減少が急激に進んでおり在来線の利用者数も少ない。現在の運行頻度でも十分に機能しており、仮にのぞみが停車したとしても利便性が高まるわけではない」という――。

※本稿は、鐵坊主『鉄道会社vs地方自治体 データが突き付ける存続限界』(KAWADE夢新書)の一部を再編集したものです。

なぜ静岡には「のぞみ」が停車しないのか

東海地方の中心都市、政令指定都市の代表駅ながら、静岡駅には「ひかり」と「こだま」しか停車せず、「のぞみ」の全列車が通過している。のぞみの停車を要望する静岡県に対し、大きな市場を持つ東京、名古屋、新大阪を最短時間で結ぶことをおもな理由として、のぞみは静岡駅を通過するといわれている。

しかし、都市規模で近い岡山駅、都市規模がもっと小さな長野駅などでは、最速列車のすべてが停車している。なぜ、静岡駅だけがこうした扱いになっているのだろうか?

まずは、次の表を見ていただきたい。

【図表1】新幹線主要駅の乗車人員(2019年度)
新幹線主要駅の乗車人員(2019年度)(出所=『鉄道会社vs地方自治体 データが突き付ける存続限界』)

のぞみ全列車が停車する品川駅、新横浜駅、京都駅では乗車人員が3万人台とさほど大きなものではない。一方、静岡駅にはひかりとこだましか停車していないというハンデがありながら、乗車人員は2万人。しかも、静岡駅がある静岡市は政令指定都市であり、県都である。政令指定都市は全国で20あり、静岡県内では浜松市も政令指定都市である。

さらに、静岡駅と浜松駅は政令指定都市、さらにいえば、静岡駅は県庁所在地にある新幹線駅としては、唯一ゆいいつ速達列車が停車しない駅でもある。そして、他の新幹線の駅まで含めれば、JR東日本の全新幹線列車が停車する大宮駅でも3万人弱。

のぞみが停車する岡山駅や広島駅でも新幹線の乗車人員は2万人を切っている可能性が高く、小倉駅は1万2000人程度、新神戸駅に至っては1万人を切っており、いずれも静岡駅を大きく下回っている。静岡駅にのぞみを停車させれば、3万人を超えるくらいの数字にはならないのだろうか。