交通事故で日本人2人を死亡させ、過失運転致死傷の罪で禁錮3年の刑に服していた米海軍大尉が、昨年12月に米国へ移送され、今年1月に仮釈放された。ジャーナリストの岩田太郎さんは「日本で有罪が確定した米軍人の刑の減免は治外法権そのものだ。背景にはバイデン大統領をはじめ米政府高官や議員の圧力がある」という――。

交通事故で日本人2人を死亡させた米国軍人の「逃げ得」

日本人に対し罪を犯した在日米軍人は「逃げ得」なのか。

2021年5月29日の午後1時ごろ、妻子とともに富士山への登山を終えた米海軍横須賀基地所属のリッジ・ハネマン・アルコニス米海軍大尉(33、年齢は当時)が運転する乗用車が、静岡県富士宮市で計5台の車に衝突する事故を起こした。片側1車線の国道469号沿いにある飲食店の駐車場に、対向車線を越えて突っ込んだのである。

この事故で、富士宮市の女性(享年85)とその義理の息子で静岡市清水区の男性(享年54)、および女性の娘(53、当時)の3人が、乗っていた車から出た直後、車と車の間に挟まれた。

すぐドクターヘリで病院に運ばれたものの、女性と男性は死亡。救急車で搬送された娘も怪我を負った。

ドクターヘリ
写真=iStock.com/Chalabala
ドクターヘリで病院に運ばれたものの、女性と義理の息子は死亡(※写真はイメージです)

「急性高山病のため突然失神」と主張

富士宮署は公務外であったアルコニス大尉を現行犯逮捕。

人命が失われたことから過失致死傷容疑に切り替えて取り調べが行われ、アルコニス大尉は居眠り運転による自動車運転処罰法違反(過失致死傷)で起訴された。

2021年8月に静岡地裁沼津支部で開かれた初公判で、アルコニス被告は「事故によって痛みと苦しみを味わわせてしまい、とても申し訳ない」と謝罪する。

地元テレビ局の静岡放送(SBS)は、アルコニス被告の発言を受け、「米軍人の男が起訴内容を認めた」と報じた。

だが、実際にはアルコニス被告側は細部で起訴内容を認めていなかった。

検察は「アルコニス被告が眠気を催し、直ちに運転を中止する注意義務があったにもかかわらず、運転を続けた」としたのだが、被告は「当時は疲労しておらず、周りの状況もよく把握していたが、登山による急性高山病のため突然失神して意識を失った」と主張していたのである。