英国で会計システムの欠陥により、郵便局長ら数百人が横領や窃盗などの罪に問われる冤罪事件が起き、システムを納入した富士通の責任も問われている。ジャーナリストの岩田太郎さんは「本来の責任はシステムの欠陥を知りながら、長年問題を放置していた英国の政治家や官僚にある。彼らは責任を富士通になすりつけて、逃げ切りを図ろうとしている」という――。
富士通に責任をなすりつけようとしている
写真=iStock.com/BalkansCat
富士通に責任をなすりつけようとしている(※写真はイメージです)

「英国史上最大の冤罪」をもたらした「富士通の勘定システム」

富士通がいま「英国史上最大の冤罪えんざい事件」の責任を追及されている。

富士通の英子会社が納入し、英国郵政の旧ロイヤルメール(2012年の民営化後にポストオフィスと改称)で2000年より使用されている勘定系システム「ホライズン」に、重大な欠陥があった。

この欠陥により、実際には郵便局の口座に現金があるにもかかわらず、「現金が不足している」と誤って表示されるという重大なシステムトラブルが15年以上も続いていた。

このシステムトラブルに気づかず、民間委託郵便局長ら736人が不足分の現金を横領したなどの疑いをかけられるという、巨大冤罪事件に発展。236人もの元局長が無実の罪で投獄され、少なくとも4人が自殺したという。

約278億円もの補償金を支払っている

訴追を逃れるために当局と取引を行い、ありもしない罪を認めた人もいる。

一方、有罪判決が取り消されないまま亡くなった元局長は60人に上る。

元局長が不足分の埋め合わせのため借金をして破産したり、結婚生活が破綻、子どもが学校でいじめを受け、収監中に子どもとの面会・連絡を1年半も禁じられる、横領の前科がついて新たな職を得られず、ホームレスに転落する人が出る、など、英国社会に修復不可能なほどの深い傷を残した。

事件が英政府による組織的な人権侵害であるのは間違いなく、英政府は補償金の支払いを進めてきた。

2019年にロンドンの高等法院で、元局長ら555人に5800万ポンド(約107億6100万円)を支払うことで和解が成立した。これをきっかけに、英政府はこれまでに約1億5000万ポンド(約278億円)の補償金を支払っている。

また、これに加え、2024年には新法案を成立させ、元局長らの有罪判決を取り消し、1人当たり60万ポンド(約1億1100万円)の追加補償金を支払う見込みだ。