富士通に責任をなすりつけようとしている
こうした英政府の責任をなすりつけられようとしているのが富士通だ。
2024年現在、労働党の「影の内閣(Shadow Cabinet)」でビジネス・エネルギー・産業戦略相を務めるジョナサン・レイノルズ氏は、英議会で、「もし富士通が事態の重大さを認識していたのであれば、事件の理不尽さの度合いに応じた責任を負わされるだろう」と述べている。
しかし、この発言を評して、米ジャーナリストのロバート・スティーブンス氏は、「過去25年に英政府の監督の下で為された極端な不正義を、(富士通への責任転嫁で)覆い隠そうとするものだ」と強く批判している。
富士通が相応の責任を取らされるのは当然としても、一義的には英政府、特に労働党の政治家の下で、元局長たちが訴追・投獄されたのであり、その責任は消えないという見解を述べたと考えられる。
ドラマがなければ政治家は動かなかった
事件の責任は労働党だけが負っているわけではない。2010年から2015年にかけて、連立政権を組んで郵政を担った「自由民主党」や、2015年から現在までの間に政権を担当している「保守党」も、この問題を事実上放置し、元局長やその家族たちを救わなかったからだ。
2024年1月に英民放ITVが事件のドラマ『ミスターベイツvs.ポストオフィス』を放映した。
このドラマがきっかけとなり、スキャンダルに大きな注目が集まる。
世論の高まりに押された政治家たちは、被害者たちに同情を示す必要に迫られた。
逆に言えば、このドラマ放映がなければ、政治は動かなかったと考えられる。