総選挙を見据えた「富士通攻撃」

政府が被害者に支払う補償金は総額で数百億円相当にも上ると思われる。

ただ、政治家の発言を見る限り、英国内では、補償金の一部を富士通が負担するのはもはや既定路線となっているようだ。

英国では2024年後半、あるいは2025年初頭に総選挙が行われる可能性が高い。

そのため、与党の「保守党」、および野党の「労働党」ともに、富士通を攻撃して国民に「正義」をアピールし、選挙に勝利しようとする可能性もある。

無実の人たちを罪に定め、冤罪もみ消しを図った英政治家や官僚の責任を富士通が負わされることになる。

世界規模の危機管理に失敗する恐れも

富士通は世界100カ国以上でビジネスを展開するグローバル企業であり、年間売上は2023年3月31日現在で3兆7137億円、従業員は12万4000人を抱えている。

※富士通の売上高について事実と異なる内容がありましたので修正しました(2024年1月19日14時45分追記)。

英国におけるスキャンダルは世界で報じられており、グローバルなビジネスを守るためにも、経営陣は早く誠意を示した方が得策という判断に傾くかもしれない。

英BBCは東京発の報道で、富士通の時田隆仁社長が被害者たちに対してコメントを出し渋っていることや、英子会社が「捜査に協力している」といった事務的な声明しか出していないことを批判的に伝えていた。

問題を放置すれば、富士通が英国でさらに炎上し、世界的規模の危機管理に失敗する恐れがあった。

こうした状況を受けて時田社長は1月16日にBBCの取材に対し、「弊社は郵便局長の生活とその家族に影響を与えたことを謝罪する」と明言。

また、英下院のビジネス委員会で同日に証言した富士通の英子会社、富士通サービシーズのポール・パターソン最高経営責任者(CEO)も、同社が当局の郵便局長起訴に協力したことを認め、被害者の補償に貢献する「道義的義務」があると述べて謝罪した。

英議会で証言する富士通サービシーズのポール・パターソン最高経営責任者(2024年1月16日)
写真=PA Images/時事通信フォト
英議会で証言する富士通サービシーズのポール・パターソン最高経営責任者(2024年1月16日)

その上で、「旧ロイヤルメールはホライズンにバグやエラーがあることを、早い段階で知っていた」とダメ出しをしている。

コスト削減ばかりを追求して冤罪を作り出した最終的な責任はあくまでも英政府にある。

富士通は英政府の郵便局長訴追に協力しているが、それは自社の責任逃れや罪のなすりつけであった可能性もある。富士通は誠意あるお詫びの表明を被害者に行い、英政府に対して数十億円から数百億円規模の支払いを覚悟した方がよいかもしれない。

いずれにせよ、英政治家や官僚の責任逃れが続く限り、被害者にとっても富士通にとっても、この事件の区切りはつけられることがないだろう。

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