組織の目標がコストカットに集中していた
この結果、2000年1月に稼働したホライズンは、その当初から本来存在しない「口座の残高不足」を表示する。
そして稼働初年度の2000年には、早くも6人の局長たちに横領有罪判決が言い渡されているのだ。
続く2001年には41人の局長が訴追され、その数は2002年に64人まで増えている。
起訴されなかった局長も含めると、2010年までに、総計2500人もの人が横領の嫌疑をかけられた。
だが、旧ロイヤルメールは十分な予算を計上して「ホライズン」の問題を解決する姿勢を見せなかった。組織の目標がコストカットに集中していたからだ。
自分たちの誤りを認めなかった
起訴された局長の多くは、裁判でシステムの欠陥を指摘し、無実を訴えた。
だが、英国の郵政担当者や検察官たちは自分たちの誤りを認めなかった。
英議会にも局長たちの訴えは伝えられたが、労働党政権はシステムに何ら過失はないと主張するばかりで、逆に訴えた局長を解雇した。
実際には旧ロイヤルメールはホライズンの欠陥に気付いており、外部コンサルタントを雇って調査までさせていたことが分かっている。
だが、欠陥の可能性を指摘した会計士たちは、突如契約を打ち切られたという。
英政府による「もみ消し工作」であった可能性もある。
こうして、過ちを早期に正す機会は失われた。
2009年までの間に、労働党政権下で起訴された局長の数は525人にまで増えた。