コスト削減でバグだらけの欠陥品を導入してしまった
しかし、実際のところは、旧ロイヤルメールの4割を占める年金など公的給付金の支払いが銀行に奪われることを恐れ、あわてて導入したものに過ぎない。
この時に入札を勝ち抜いて選ばれたのが、「ホライズン」を開発した英IT企業のインターナショナル・コンピューターズ・リミテッド(ICL)だ。
1968年創業のICLは1981年から富士通と関係があり、1990年には富士通が株式の80%を取得。1998年に完全子会社化している。
では、なぜICLのホライズンが選ばれたか。
単純に、入札価格が最も低かったからだ。
だが、安かろう悪かろうという言葉の通り、「ホライズン」はバグだらけの欠陥品であった。
「安物買いの銭失い」が騒動のきっかけ
当時、旧ロイヤルメールの全株式を保有していた英政府は、まさに「安物買いの銭失い(Penny wise and pound foolish)」をしてしまった。
これにより、今に至る騒動の種をまいてしまったのである。
当時の保守党政権の下、社会資本の整備を民間にゆだねる「PFIプロジェクト」として、「ホライズン」はスタートした。
その後「ホライズン」は、1997年から2010年まで政権の座にあった労働党政権に引き継がれる。
そんな中、「ホライズン」がまだ稼働準備期間中だった1998年には、すでにシステムの「重大なリスク」が内部文書で指摘されていた。
英フィナンシャル・タイムズ紙によると、1999年、当時のトニー・ブレア首相に対して、「ホライズン」の欠陥の一覧が届けられていた。にもかかわらず、政権は調査を開始しなかった。