米国人の「治外法権」を認めたようなもの

こうした運動により、アルコニス元受刑者は、刑期を半分終えた2023年12月に米国に移送された。

その直後、今年1月に米カリフォルニア州の法定刑基準で刑が転換され、十分な期間服役したと判断されて仮釈放された。

日本で服役していれば2025年7月まで社会に出てこられなかったはずだが、仮釈放中とはいえ、アルコニス元受刑者は自由の身となった。

当然、事故の遺族としては納得がいかないだろうし、部分的に米国人の「治外法権」を認めたようなもので、釈然としない。

手錠
写真=iStock.com/turk_stock_photographer
アルコニス元受刑者は自由の身となった(※写真はイメージです)

バイデン大統領の圧力に岸田首相が屈した可能性

国際刑事司法に詳しい立命館大学の越智萌准教授は、「ABEMA」の番組で、「日本と米国は受刑者が釈放後に一番社会に戻りやすい場所で服役させる趣旨で締結された『受刑者移送条約』の締約国であり、アルコニス大尉はこの枠組みに基づき米国に移送された」と指摘。

さらに、残り1年半の刑期については、「日本で認定された過失致死は変えずに、カリフォルニア州の刑法の場合どれくらいの罪に当たるかが再審査され、同州においては最大禁錮が16カ月であることから、日本では既に17カ月以上刑に服したアルコニス元受刑者の法定刑はすべて日本で服役したと判断された」と解説する。

米国側が、政治的な圧力と2つの国際条約をアクロバット的に用いて、残りの刑期を無理やり短縮させたようにしか見えない。

あたかも岸田首相がバイデン大統領の要求に屈し、幕末の日本よろしく裁判権を治外法権的に渡してしまったように映る。