インドネシア政府に食い込む中国EVメーカー

ウーリンは22年8月に超小型BEV「エアEV」シリーズのインドネシア国内での生産開始を発表するなど、インドネシア市場に最も早い時期から乗り出していた。

直近でも新モデル「Binguo」の現地生産開始も発表するなど勢いを強めている。

PR戦略においても、ウーリンはインドネシア政府に食い込んでいる。

インドネシアは2022年にG20の議長国、2023年にはASEAN議長国を務めたが、ともにウーリンの「エアEV」が公式車の1つに採用され、招待者の会場までの送迎などに使用された。

昨今の脱炭素への協力姿勢をアピールするのはもちろん、国内消費者へのPR効果もあったとみられる。

「エアEV」の生産開始式典に出席したインドネシア政府高官と中国の駐インドネシア大使
写真=上汽通用五菱汽車プレスリリース(共同通信PRWire)より
ウーリンはインドネシア政府に食い込んでいる(「エアEV」の生産開始式典に出席したインドネシア政府高官と中国の駐インドネシア大使)

「規制に引っかからない車」としてヒット

ウーリンの「エアEV」シリーズは、2022年の販売台数が8053台と、その年インドネシアで最も多く売れたLCEV(Low Carbon Emission Vehicle:低炭素排出車。バッテリーEV、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車を含む)だった。

インドネシア政府による購入時の税減免政策で後押ししたほか、特徴的なデザインと、約200万~300万円という低価格で、ガソリン車と比べても価格競争力があったことが大きい。

インドネシアでは、ジャカルタなどにおける交通渋滞の解消と、大気汚染の軽減や炭素排出量減少のため、交通量が多い道路については車両のナンバープレートに応じた交通規制を実施している。

だが、排気ガスを出さないバッテリーEVは、この規制の対象外であることも、ウーリン製EVにとって追い風となった。

「渋滞規制に引っかからないセカンドカー」としての需要をつかんだというわけだ。