ベトナムをはじめASEAN地域への投資が増えている

最近、中国の主要企業の海外進出が顕著になっている。2023年1月~11月までの累計をみると、中国企業のベトナムへの直接投資は韓国、シンガポール、わが国の企業を上回った。ASEAN新興国、さらには米欧市場を目指す中国企業も多い。

10月26日~11月5日の日程で開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」で展示されたBYDの車両
撮影=プレジデントオンライン編集部
10月26日~11月5日の日程で開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」で展示されたBYDの車両

その背景として、中国の不動産バブル崩壊による経済低迷が深刻なことがある。地方政府や不動産デベロッパー、シャドーバンク(影の銀行、銀行以外の投資ファンドなどによる金融仲介ビジネス)分野で、デフォルトリスクは急上昇している。

また、雇用・所得の環境改善もあまり見られず、特に若年層の失業率は46.5%に達したとの試算も出ている。消費者物価指数はマイナス圏に沈み、デフレ圧力も増している。家計の消費も盛り上がらず、当面、中国経済の大幅な改善は見込みにくい。

中国企業の進出によって、現地企業などとの競争は激しさを増すだろう。一帯一路の沿線地域で問題視されたように、中国企業の事業計画の実現力に不安もある。ASEAN諸国では、南シナ海へ進出する中国への警戒感も高まっている。

iPhoneの受託企業もベトナムの生産体制を強化

2019年頃から、先端分野での米中対立の影響を避けるため、生産などの拠点を海外に移す中国企業が増えた。足許、そのペースは勢いづいている。2023年のベトナム向け直接投資で、中国はわが国やシンガポール、韓国を抜き、トップになる見込みだ。

業種別にみると製造業が多い。IT先端分野では、アップルの“iPhone”などの受託生産を行う“立訊精密工業(ラックスシェア)”は、ベトナムでの生産体制を強化している。アップルは、中国からインドへ製品のユニット組み立て生産を移管した。ラックスシェアも顧客企業の拠点シフトに応じてインドでの生産を目指したが、中印関係の不安定化などを背景に認可がおりなかった。

中華スマホメーカーの“シャオミ(小米)”もベトナムに進出した。シャオミはベトナムのスマホ市場でのシェア拡大に加え、経済成長期待の高いASEAN地域への輸出拠点としても重視している。シャオミは、インドの電子機器受託製造企業のディクソン・テクノロジーズにも生産を委託する。