モビリティショーでひときわ際立ったBYDの展示
10月25日、“ジャパンモビリティショー”の報道向け公開が開催された。出展企業の中で存在感が際立ったのは、中国の“比亜迪(BYD)”だ。「EVで世界の温度を1℃下げるのがBYDのビジョン」と、日本法人の劉学亮社長は強く訴えた。EVの一点集中で高い成長を目指すとのメッセージは明瞭だ。
一方、トヨタや日産をはじめ国内の大手自動車メーカーは、“全方位型”の戦略を進めると改めて表明した。エンジン車、HV(ハイブリッド車)、PHV(プラグイン・ハイブリッド車)、EV、そしてFCV(燃料電池車)のすべてをプロダクト・ポートフォリオに収める。
また、居住空間としての自動車、空飛ぶ自動車など、多種多様な移動=モビリティの手段を提供する。電動化を加速するため、全固体電池などの研究開発も強化する。いずれも“EVで業績を拡大する”というメッセージではない。各社共通して、HVなどエンジンを搭載した自動車の製造技術への依存の高さがうかがえた。
この状況が続くと、BYDやテスラなどと、わが国の自動車メーカーのEV競争力の差は拡大するだろう。EVの出遅れによって業績が伸び悩めば、全固体電池など次世代技術の研究開発の強化も難しくなるだろう。展開次第でわが国の自動車が、家電産業の二の舞になる恐れは増しそうだ。実際にショーを訪問し、それほどBYDの存在感は際立った。
日本を抜き、中国が世界最大の自動車輸出国に
足許、世界の自動車産業の環境変化の勢いは増している。脱炭素、デジタル化の加速などを背景に、エンジン車からEVへのシフトは鮮明だ。EVはエンジンを搭載した自動車ほどの製造技術を必要としない。わが国でも家電量販店などがEV分野に参入した。
その中で急速に競争力を発揮しているのが、中国で生産を行うEVメーカーだ。2023年1~3月期、わが国を追い抜き中国は世界最大の自動車輸出国になった。8月までの各月累計でも、傾向に変わりはない。牽引するのはBYDと上海で生産能力を増強し輸出体制を整備した米国のテスラなどだ。
BYDとテスラはEVの生産体制を急速に強化した。共産党政権は土地の供与や工作機械の導入、EV販売などを政策面から補助した。そのため、BYDなどの中国メーカーのコスト負担は、日米欧韓の自動車メーカーを下回る。
中国共産党政権はEV生産コストの4割程度を占めるといわれる車載バッテリーメーカーへの支援も強化した。車載バッテリー最大手、寧徳時代新能源科技(CATL)、BYDのバッテリー事業の成長は加速した。