一人勝ち状態のテスラを追い抜いた

今年初来、世界の自動車市場でEVの販売増加が鮮明だ。トップは、中国のEVメーカー“比亜迪(BYD)”、2位は米国の“テスラ”。2社によるトップ争いは熾烈だ。吉利汽車(ジーリー)や広州汽車集団の“AION(アイオン、旧広汽新能源)”などの中国企業も高シェアを獲得した。わが国の自動車メーカーはEVシェア争いの上位に食い込めていない。

写真=時事通信フォト
記者団の呼びかけに応じる岸田文雄首相(右)=4日、首相官邸

世界のEV市場における勝負は、ほぼ決まりつつあるといっても過言ではないかもしれない。BYDなど中国勢の価格競争力、新モデルの投入のスピードには目を見張るものがある。それを支える要因として、習政権の産業補助金政策などの影響は重要だ。

そうした中国メーカーの台頭に対して、今後、各国から反発が出ることが予想される。欧州委員会は、米国のように中国製EVに制裁関税をかけることを検討するという。EVをめぐる貿易摩擦は激化するだろう。

一方、わが国は、中国製EVにまで販売補助金を出している。中国EVメーカーの急速なシェア拡大にどう対応するか、国内のEV産業をどう育成するか、わが国として真剣に検討することが必要だ。

ついに日本を追い抜き世界1位に

2023年の年初以来、世界の自動車市場の環境は急激に変化している。昨年まで、世界最大の自動車輸出国はわが国だった。しかし、2023年1~3月期、4~6月期と2四半期続けて、中国の輸出がわが国を追い抜いた。主たる要因は、EVの輸出急増だ。1~6月、中国のEVなど新エネルギー車の輸出台数は2.6倍増、割合は全体の25%に達した。

足許、世界のEV市場では、BYDのシェア拡大が鮮明だ。報道された内容や、各国のデータ調査企業のプレスリリースなどによると、2023年上期、世界の電動車(EV、PHV、FCV)市場においてBYDは約117万台を販売しトップ。2位は、米テスラの約78万台、3位が独フォルクスワーゲンの約31万台。4位は中国のジーリーの約27万台、5位はステランティスの約22万台だったようだ。ジーリーはスウェーデンのボルボなど先進国の自動車メーカーの株式も保有する。