中国製EVは爆発的に売れていたが…

脱炭素化に注力する欧州連合(EU)は、その手段として電気自動車(EV)の普及に努めている。欧州自動車工業会(ACEA)によると、8月の新車登録台数のうち、EVが占める割合は21%と、初めて2割を超えた模様だ。そのEUは、中国製の廉価なEVがEU域内の市場に流入することに対して危機感を強めている。

2023年9月15日、中国・上海で、中国の電気自動車メーカーXpeng社のショップの前を自転車で通り過ぎる女性。
写真=EPA/時事通信フォト
2023年9月15日、中国・上海で、中国の電気自動車メーカーXpeng社のショップの前を自転車で通り過ぎる女性。

EUの執行部局である欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長は、9月13日に任期中で最後となる施政方針演説に臨んだ。その際、中国製のEVの価格が、中国政府による補助金を受けて人為的に安く抑えられており、EU製のEVが価格競争で不利に立たされているとして、調査に乗り出すと発表した。

EUが危機感を強める背景には、中国製のEVが近年、爆発的な速さで輸出を伸ばしていることがある。特にヨーロッパは、中国の自動車メーカーにとって主力の市場だ。中国海関総署の統計によれば、ユーロ圏の主要国(ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オランダ)向けの乗用車の輸出が、2022年に急増したことが分かる(図表1)。

【図表】中国のユーロ圏主要国向け乗用車輸出
出所=中国海関総署

EUトップは「中国政府の補助金」を非難

この統計では動力源別の動きが不明だが、こうした乗用車の中にはEVのみならず、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)なども含まれている。EUが危機感を募らせている事実が物語るように、うち相応に高い割合を、欧州製のEVよりも安価に設定された中国製EVが占めているのだろう。

フォンデアライエン欧州委員長がいうように、中国政府が中国の自動車メーカーに「レッド補助金」(輸出補助金)や「イエロー補助金」(他国の国内産業に対して損害を与える補助金)を出しているなら、EUは世界貿易機関(WTO)ルールに則り報復関税を課すことができる。では、本当に中国政府はそうした補助金を与えているのか。