手ごろな値段で使いやすいEVは増えている

ドルフィンなどBYDのEVは、内装や操舵性の面で自動車としての基本性能は十分に満たしているようだ。航続距離も競合モデルに引けを取らない。BYDはモビリティショーに、独立した4つのモーターによってその場で360度回転が可能な高価格帯のSUV“U8”も出展した。

また、CATLは航続距離700キロを実現するリン酸鉄リチウムイオンバッテリーの実用化を目指している。CATLは冷却部材などをパックに組み込むことによりバッテリーの容量を増やし、航続距離の延長を目指す。この製造技術を“セル・トゥー・パック”と呼ぶ。

中国EV、バッテリーメーカーの技術革新は、BYDやテスラのEV価格引き下げ、航続距離の延長、安全性向上に寄与した。さらに、わが国で販売するBYDのEVには車種によって異なるが国と自治体の補助金も適用される。エコカー減税などの税制優遇もある。

手ごろな値段で、相応の性能を持つEVを提供する。先進技術の開発も徹底強化する。それによってEVで世界の気温を1℃下げると宣言するBYDは、モビリティショーの中でも存在感が際立った。

高価格帯のSUV「U8」
撮影=プレジデントオンライン編集部
高価格帯のSUV「U8」

全方位型戦略の日本メーカーはどうする

製造技術の急速な向上、共産党政権の支援などを背景に、中国のEV産業の成長は加速するだろう。なお、中国では新興EVメーカーの破綻が増え、野ざらしで放置されるEVも増えた(EVの墓場)。そうした側面もあるが、BYD、上海蔚来汽車(NIO)などは急速にEVの生産体制と海外拠点を拡充している。

共通するのは、世界のEV需要を可能な限り取り込んで業績を拡大するという方針だ。

テスラを含め中国製EVの加速度的な普及に、わが国の自動車メーカーが対応するためには、これまでの発想を根本から変えなければならないだろう。それができるか否かが、今後のEVシフトへの各メーカーの対応力に大きく影響する。

確かに、全方位型の戦略でエンジン車からEV、FCV、さらには次世代の動力源として期待される全固体電池の開発を進めることは理にかなっているように見える。しかし、今得られるEV関連の収益を確実に増やさなければ、中長期の視点で研究開発体制を強化することは難しくなるだろう。EV市場でシェアを高めることができなければ、次はない。それくらいの覚悟がわが国の自動車関連企業に必要かもしれない。