中国EV勢が欧州で急速にシェアを伸ばしている
欧州では、BYDやSAIC傘下のMG(モーリス・ガレージ)、中国で生産するテスラやBMWなどのEVが急速に普及した。特に、中国メーカーは政府による土地供与、産業補助金によってコスト競争力が高く、シェア獲得ペースは急速だ。国内市場の低迷を海外の需要で迅速に補おうとする中国企業の姿勢は、非常に明確といえる。
コストカットもある。生産年齢人口の減少などによって中国の人件費は上昇した。一人当たりのGDPを比較すると、中国が182万円に対し、インドネシアは69万円、ベトナムは59万円だ(2022年のIMF推計値を円換算)。
アップルなどの主要先進国の企業が中国から海外へ事業拠点を移管したことも大きい。半導体など先端分野で米中対立は先鋭化した。台湾問題の緊迫感も高まった。中国からインドやASEAN新興国地域へ生産拠点を移管する主要先進国や韓国、台湾の企業は増加した。
中国企業がグローバル市場での成長戦略を強化するために、供給網の地殻変動というべき変化への対応も急務である。
中国vs.東南アジアの貿易戦争リスクが高まっている
今後も海外進出を強化する中国企業は増えるだろう。懸念されるのは、進出した国や地域において、中国企業と現地企業の競争が熱を帯びることだ。状況によっては、進出先の政策当局が、中国企業が過度な価格競争を生んでいると判断し制裁関税などを適用する恐れもある。貿易戦争のリスクは上昇する。
ベトナムでは中国企業による直接投資急増に懸念が高まりつつあるようだ。急速な資本の流入によって土地や資材などの価格が急騰し、景気変動リスクは上昇傾向との見方は増えつつあるようだ。中国企業の進出によって人材の争奪戦が起きたり、電力の不足が発生したりする恐れも高まった。工場建設の急増によって大気や水質の汚染が深刻化するとの指摘もある。
インドネシアでは、中国企業が受託した高速鉄道計画の開業が大幅に遅れた。同国政府は、工業化の推進や、デジタル、医療などの先端分野での製造技術を強化するために、わが国企業など中国以外からの直接投資を増やそうとしている。