日本の“ドル箱”市場に参入する中国勢が急増

EV分野でも中国勢の海外進出は急増した。ベトナムでは世界最大手(2023年上期実績)のEVメーカーに急成長した“比亜迪(BYD)”が生産を計画している。タイ、マレーシア、インドネシアなどでもBYDは事業体制を強化する方針だ。“上海汽車集団(SAIC)”、“五菱汽車(ウーリン)”もベトナムに進出した。

EVバッテリー分野では、世界最大手の“寧徳時代新能源科技(CATL)”がベトナム最大の複合企業であるビン・グループと戦略的提携を交わした。“国軒高科(ゴション・ハイテク)”もビン・グループと提携し、車載用バッテリー工場を共同で建設する。

インドネシアでCATLは、鉱山開発や生産拠点向けの直接投資を実行した。東南アジア地域は、わが国の自動車メーカーにとって低燃費、高耐久のエンジン車需要を取り込む“ドル箱”の市場だったが、EVに関しては川上から川下まで中国メーカーの進出が勢いづいている。

中国企業が国内市場に見切りをつけ始めた

ベトナムなどへ中国企業が事業拠点を移管するのは、不動産バブル崩壊によって経済の低迷が深刻さを増していることがある。不動産バブル崩壊によって、北京など大都市圏でも住宅価格は下落した。不動産市況が下げ止まる兆しは見えない。

過去のピーク時、不動産関連の需要は中国の国内総生産(GDP)の30%近くを占めるとの試算もあった。バブル崩壊によって土地、マンション、セメント、建機、家電製品など広範囲に需要は減少した。11月の輸入が予想を下回ったことはそれを象徴する。

デフレ圧力は高まり、若年層を中心に雇用・所得環境の悪化も止まらない。不良債権処理も遅れた。中国政府は国内の企業に業績の厳しさが高まる中で採用を増やすよう圧力を強めた。中国の企業は自国市場での成長をあきらめつつあるといっても過言ではない。

中国の企業はより自由、成長期待の高いベトナムなどへの進出を強化することが必要になった。IT先端分野では、米国の永住権を取得し、より自由な環境で成功をめざしたいと考える企業家もいると報じられた。