父親が親権者となっても苦労やリスクは多い

では、男性の場合の「離婚」のリスクはどうでしょう。男性の場合も、妻が「家庭を顧みない」「育児放棄をする」「浪費三昧をする」「浮気をする」などの理由から、母親(妻)ではなく、父親たる男性が親権を持つケースが存在します。そうした場合、やはり女性と同じような苦労やリスクが生まれます。男性の父母が同居もしくは近くに住んでいるなら、ある程度助けを求めることができるかもしれませんが、晩婚化している昨今、父母も高齢化しており、第一線で子育てをできる気力や体力そして財力があるとは限りません。

また、家事育児をある程度外部委託できたとしても、いまだ社会が「男女分業型結婚(生活)」を前提としている以上、保育所や幼稚園でも小学校でも中学校でも、圧倒的に参加率が高いのは母親(女性)です。子どもを取り巻く環境が、「父親不在社会」である以上、ママ友コミュニティにシングルファーザーは入りにくく、孤立しやすいという状況も発生しがちです。

また、自らは親権を持たなかった場合も、今後養育費を支払い続ける義務が生じたり、愛する子どもと頻繁に会えなくなってしまったりするリスクがあります。日本において、いまだ「離婚」は何かしらの「喪失」が伴うことが専らだということです。

離婚届と印鑑
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週の大半は母親と、週末は父親と過ごす子どもたち

ちなみに子どもと親の関係を考えた際、日本と欧米では、考え方が異なることも追記しておきます。ヨーロッパやアメリカでは、「離婚」をしても「家族」の絆は別という考え方が一般化しています。仮に夫婦間の愛情はゼロになったとしても、「子は親と過ごす権利がある」と彼らは考えます。子どもは親の付属品ではなく、れっきとした意思と権利を持つひとりの人間だからです。たとえ親の事情で「離婚」「再婚」したとしても、それを契機に子どもが父親(あるいは母親)と会えなくなるのはあってはならないと考えるのです。ならばどうするか。私の聞いたドイツの事例では、こんなケースがありました。

ある夫婦が「離婚」をして、2人の子どもは母親に引き取られました。元妻・元夫は、もはや口もききたくないほど関係性が悪化していますが、双方共に子どもとは関わりたい。そこで子どもたちは週の大半を、母親と新しい彼氏が住む家で過ごし、週末は近所に住む元夫(父親)の家で過ごす生活を続けていました。元夫が仕事や用事で都合が悪い場合は、元妻が引き取り、元妻が仕事や新しい彼氏と旅行などの際は、元夫が引き取る。子どもたちはそれぞれの家で自室を与えられ、楽しそうに過ごしています。そんな子どもたちの誕生日ともなれば、彼らに関係する大人たちが大集合します。