明治時代半ばまでの非嫡出子率は約10%
現在「少子化」に悩む日本は、戦前までは「子だくさん」文化でした。もちろん不妊に悩む人や、流産・死産は今以上にあったでしょう。乳幼児の死亡率も高かった時代には、イエの存続のために、複数の子どもを跡取り予備群として育てることも必要でした。例えば農家では子どもは大切な労働力でもあり、5人、8人、10人以上と、大勢の子を持つ家庭は珍しくありませんでした。
加えて、いわゆるお妾さん(第二夫人など)が産んだ子どもも存在しました。明治時代半ばまでの非嫡出子率は、約10%にも達しました。現在はわずか2%にすぎないことを考えれば、正式な「結婚」外の男女から生まれた子どもたちの存在は大きかったのです。もっともお妾さんを持つには、相当の経済力も必要です。正妻や嫡出子以外の「家庭」を外に持つには、彼らには本宅とは別の住居や生活費も与えなくてはなりません。それができる経済力のある男性にしか、第二夫人以降は可能ではありませんでした。
フランスの非嫡出子率は約60%
かつてのそんな状況から、現在の日本が学べることは何でしょう。もちろん現代の世に、「お妾さん」の存在を促すわけではありません。ただ、正式な結婚をせずに「未婚の母」になった女性への支援を充実させたり、「婚外子」をしっかり育てられる仕組みを社会が構築したりといったことはできるはずです。
先にドイツの事例を紹介しましたが、少子化に歯止めをかけたフランスも同様です。なんとフランスでは非嫡出子率が、約60%にもなるのです(繰り返しますが、日本は2%です!)。30人学級であれば、クラスメートのうちの18人は正式な結婚を経ていない親から生まれている計算になります。
「結婚」という形は経ていないものの、パートナーとして実質上夫婦生活を営むカップル、その他、未婚の母や離婚した母、父子家庭、祖父母に育てられている子、同性の両親を持つ子、移民を養子にしている家庭などなど、様々な「家庭=子どもの環境」が存在します。そこで、どんな出自や環境に生まれても、子の成育環境がある程度保障され、社会が見守る体制を敷くこと。そうした社会の責任感にこそ、日本の少子化を変えるヒントや選択肢が隠されているのではないでしょうか。