物的証拠がない被害はやはり録音が最強
ちなみに私の裁判で会社側は、いかに私がダメ社員だったかを証明するため計3人の社員から証言をとり、証拠として提出してきた。法廷で証言台にも立ち、熱弁を振るっていた。だが、結果はお伝えした通りである。
どのような証拠を集めるべきか悩んでいる方は、まずは「労働に関する知識を集める」ことに汗を流してほしい。知識は武器だ。法律もそうだし、民事裁判で採用されやすい証拠は何かなど、いくらあっても困らない。なお証拠集めに関して、現時点で私は「職場のコピーを自宅に作る勢いで、全部の資料や音声をとりあえず集めておく」といった結論に辿り着いているが、モラル的にはいかがなものかと思うし、罪悪感を抱く方も多いかもしれない。
それでもやはり録音アプリは積極的に活用すべきだろう。威圧的に机を叩く音などを録音できたら、むしろこちらが感謝したくなるほどのレベルで強力な証拠になる。今時の録音アプリは無料でダウンロードでき、スマートフォンであれば相手も警戒心を抱きにくい。パワハラやセクハラ問題等、物的証拠が残りにくい被害を受けている方は、まずは自分の発言を記録に残すことを目的に、録音アプリを使ってみてはいかがだろうか。
基本的に「会社と戦う」選択肢は獣道である
労働問題の慰謝料は50万~100万円も取れたら御の字の世界。弁護士費用を払ったら赤字になることは十分に考えられるし、投資あるいは消費する労力や時間は膨大。コスパやタイパを考えると「泣き寝入り」という道が合理的であるケースも多いのではないか。それでもどうしてもやり返したいという方は、例えば慰謝料+未払い残業代請求など、「合わせ技」で請求するのが好手だろう。
基本的に「会社と戦う」という選択肢は獣道だ。いざという時の保険くらいに考えるのが正解だと私は考えている。正直に言えば、誰も進んでいない道を進むのは、けっこうつらい。家族や友人からは「会社相手に勝てるの?」「裁判なんてやめて、気持ちを切り替えて、次のステージへ進んだほうがいいって」といったアドバイスが飛んでくる。
これらは純粋な親切心から来るので、拒絶するのは胸が痛むし、なんだか自分が悪いことをしているように錯覚する。まして戦う相手はかつての仲間だ。傷つけられるのもキツイが、傷つける側に回るのもそれなりにキツイ。裁判しているという事実がマイナスに影響するせいか、周りからは刃のような冷たい眼差しと評価を受ける。結果、「自分がやっていることは本当に正しいのか?」といった疑問が常につきまとうことになる。