「この人、変なことを言ったんですよ」と橋渡し
では、ツッコミを、もう少し細かく分解・分析してみましょう。
① 本来は「明るい未来が訪れます」と言うべきところを「痛みに慣れます」と言ったんですよ、と気づかせる『通訳』の役割
② 「皆さん、気づいてますか? 今、この人、変なことを言ったんですよ」とお客さんに告知して『橋渡し』をする役割
ツッコミ「そんなわけあるかっ‼」
このベタなやり取りでも同じことがいえます。
「この人、変なこと言ったよ」という『橋渡し』と、「12月になれば冬だから逆に寒くなりますよね。でも、この人はそれをわかってないんですよ」という『通訳』をしているのです。
ツッコミは一般的には短ければ短いほどいいといわれています。それは長々と『通訳』(解説)すると、面白さが失われるからです。ただし、ギュッと短く凝縮するので、つい「訂正」や「怒り」だと思われてしまうのです。
そして、その勘違いがさらなる悲劇を生みます。ツッコミを習得しようとする人が、ツッコミの本当の意味や役割を知らないまま、ツッコミのフレーズやテクニックだけをマネしようとしてしまうのです。
これは、料理の材料や調理器具の使い方などを理解しないまま、見よう見まねで料理をするようなものです。当然の結果として失敗します。早くいえばスベります。
ウケないからといって、勢いやテンションをマックスにしようものなら、見ているだけで痛々しい人の出来上がりです。
マスターすべきは、ツッコミの「フレーズ」や「間」や「テクニック」ではありません。通訳して橋渡しをするという「ツッコミマインド」なのです。このツッコミマインドをマスターしておけば、相手を不快にさせる失礼なツッコミをすることもありません。さらには、ツッコんだ相手から喜ばれます。
だって、そうでしょう? あなたの発言を誰かが拾って、自分も考えていなかった面白さを際立たせてくれたら、嬉しいに決まっています。
まとめます。今よりちょっと面白いトークをやりたいなら、まずはボケて笑いをとることを手放しましょう。それよりハードルが低い“ツッコミ”を習得しましょう。
ツッコミとは、相手の面白さを見つけ出して、それが他の人にも伝わるように通訳して橋渡しすること。トレーニング方法としては、街中の気になる風景から「何故それを面白いと感じたのか?」を自分なりに分析してみましょう。
まずは相手のいいところを見つけてみましょう。どうです? そんなこと、心掛けたこともなかったでしょう?
え? 普通すぎる? 何だ、その平凡な結論は、って?
それそれ! そのツッコミこそ、私の発言の面白さを通訳して橋渡ししている行為です。