自分に自信を持つにはどうすればいいのか。コロンビア大学教授のトマス・チャモロ=プリミュージク氏は「最近の心理学の研究によると、能力の低い人ほど自信過剰になっている。自信のない人のほうが成長できる可能性があり、ポジティブである」という――。
※本稿は、トマス・チャモロ=プリミュージク『「自信がない」という価値』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。
「無知の知」を説いたのはソクラテスだけではない
どんな分野であれ、その道のプロの特徴の一つは、自分の知識の限界を知っていることだ。現に古今東西の賢人たちは、自信を持ちすぎることの危険を何度も口にしてきた。
たとえば西洋哲学の父であるソクラテスは、「自分が知っているのは、自分は何も知らないということだけだ」という有名な言葉を残している。他の賢人たちも、だいたいソクラテスと同じ考えだ。
そして数世紀がたち、フランスの哲学者で詩人、それに啓蒙時代を代表する知識人の一人であるヴォルテールも、「読めば読むほど、自分は何も知らないという確信が深まる」と言った。そして進化論を生んだ天才であり、歴史に名を残す科学者であるチャールズ・ダーウィンは、「自信は知識から生まれるよりも、無知から生まれることのほうが多い」と言っている。他にも例はたくさんある。私たちは、人類を代表する賢人たちの警告に、もっと耳を傾けるべきではないだろうか。